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戦国御伽草子
弐ノ巻
ひろいもの

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。それだけ中身は重要なものと言うことだろう。



開けようと思ったけれど、何故かあかない。



…兄上のものかな。だったら、前田家に関わるものかもしれない。持っていこう。



あたしは結構重たいそれを小脇に抱えてから、由良を待たせていたことが頭をよぎって、何気なく振りかえった。



けれど、がらんとする前田家の焼け跡が広がるだけで、そこにいた筈の由良が、いない!?



あたしはすっと血の気が下がった。



「由良、由良っ!?」



慌てて走り出したけれど、瓦礫に足をとられて全く進めない。



どうしよう!柴田の逆恨みがあるかもしれないって話してたじゃないの!あたしのバカ!由良があたしと一緒にいる、それでなくても前田と佐々は家も隣同士、焼け出されたあたしを住まわせるくらいだし、仲がいいなんて調べなくたってわかること。



目的はあたしだとしてもよ、将を射んと欲すればまず馬を射よって言うじゃないの!



どうしよう、由良に何かあったら!



「由良っ!返事して!どこにいるの由良!」



「瑠螺蔚さま、ここです」



ようやく道まで出てきたら、由良の声がした。



あたしは一気に安堵して、声のする方に歩いて行った。



「もう由良、どっか行く時は声かけてよ〜あたし由良に何かあったらどうしようって心臓止まりそうだったんだ、か、ら…」



「すみません瑠螺蔚さま。でも私、この人が見えて…」



木陰にいる由良の隣には、ぐったりと直土にうつ伏せになっている男がいた。



「い、生きて…?」



思わず聞いてしまったのは仕方がないと思う。



「はい。温かいので…多分」



「多分じゃないでしょ。人は死んだ直後でもあったかいのよ」



自分で言っていて、ちくりと過去が痛んだが、気づかないふりをした。



あたしは男に歩み寄る。



「瑠螺蔚さま、どういたしましょう」



「どうしましょうもなにも、生きてたら手当てするしかないでしょ」



「でも、私が見つけておいてなんですけれど、追いはぎの類でしたら…」



倒れた旅人を装って油断させて身ぐるみはぎとる追いはぎも確かにいるらしいけれど。



「まぁ、多分大丈夫よ。山中ならいざ知らず、ここは天下の前田の目の前だし。こんなとこで追い剥ぎやるバカもいないでしょ。ちょっとこれ持ってて」



あたしは由良に文櫃を預けると、とりあえず男を仰向けにひっくり返した。



大分薄汚れてる
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