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ラ=ボエーム
第四幕その三
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「ねえロドルフォ」
 今度はロドルフォに声をかけた。
「何だい?」
「悪いけれど。横になっていいかしら」
「横に」
「少し。疲れたから」
「ああ、いいよ」
 ロドルフォはこくりと頷きコルリーネが用意してくれていたベッドに横たわらせる。
 横たわったミミに布団を被せる。そしてその枕元に座った。皆二人の周りを囲んだ。
「皆。側にいてくれるのね」
「当然じゃないか」
 ロドルフォは優しい声で言った。
「君のことが好きだから。誰も君を嫌わないよ」
「・・・・・・有り難う」
 そう言った後で咳をした。血は出なかったがその咳は彼女の命を表わしていた。
「寒いかい?」
「いえ、大丈夫よ」
 ロドルフォに答える。
「暖かいから。皆がいてくれて」
「そうか」
「ええ、そうよ」
 この時でもロドルフォ達を気遣っていたのだ。
「だから。安心してくれ」
「わかったわ。ムゼッタ」
 ムゼッタに顔を向けた。
「何かしら」
「有り難う。ここまで連れて来てくれて」
「何言ってるのよ」
 顔は笑っていたが声は泣いていた。顔だけは無理して笑みを作っていたのだ。
「こんなこと。当然じゃない」
 言葉も詰まっていた。
「友達なんだから」
「友達」
「そうよ。こんなことで・・・・・・御礼なんかいいわ」
「そうなの」
「そうよ。だから気にしないで、いいわね」
「・・・・・・ええ」
 弱く微笑んでこくりと頷いた。
「それなら」
「気にしなくていいから」
「ムゼッタ」
 そんな彼女にマルチェッロが声をかけた。
「今まで誤解していた。済まない」
「・・・・・・いいのよ」
 声は泣いたままであった。
「気にしてなんかいないから」
「そうかい」
「ショナール」
 コルリーネの声は何時になく感傷的なものであった。
「ちょっと出て来る」
「どうしたんだ?」
「・・・・・・お金を作ってくる」
「お金って。君には何も」
「あるさ」
 真摯な顔で言う。
「僕の長い間の友人がいる。彼の力を借りる」
「友人って」
「彼だ」
 そう言って壁にかけてある外套を手に取った。

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