暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
ユイの正体
[8/8]
[8]
前話
[9]
前
最初
[1]
後書き
[2]
次話
げると、キリトが部屋の天井を見据えて絶叫していた。
「そういつもいつも……思い通りになると思うなよ!!」
ぐいと腕で両目をぬぐうと、彼は突然部屋の中央の黒いコンソールに飛びついた。表示されたままのホロキーボードに猛烈な勢いで指を走らせ始める。
たちまちキリトの周囲には無数のウインドウが出現し、高速でスクロールする文字列の輝きが部屋を照らし出した。呆然とアスナが見守るなか、キリトの指はどんどん速度を上げ、キーボード全体に青白いスパークが閃きはじめた。
「行くな……ユイ……ユイ……!」
うわごとのように呟くキリトは、もう周囲のウィンドウを見てさえいない。
両目を半眼に閉じ、直接システムと交信しているかのように思えた。
緊迫した数秒間が過ぎ去ったあと、不意に黒い岩でできたコンソール全体が青白くフラッシュし、直後、破裂音とともにキリトがはじき飛ばされた。
「キ、キリトくん!!」
あわてて床に倒れた彼のそばににじり寄る。
頭を振りながら上体を起こしたキリトは、憔悴した表情の中に薄い笑みを浮べると、アスナに向かって握った右手を伸ばした。わけもわからず、アスナも手を差し出す。
キリトの手からアスナの手のひらにこぼれ落ちたのは、大きな涙のかたちをしたクリスタルだった。複雑にカットされた石の中央では、とくん、とくんと白い光が瞬いている。
「こ、これは……?」
「──全部は無理だったけど……ユイのコアプログラム部分をどうにかシステムから切り離して、圧縮してオブジェクト化した……。ユイの心だよ、その中にある……」
それだけ言うと、キリトは力を使い果たしたように床にごろんところがり、目を閉じた。アスナは手の中の宝石を覗き込んだ。
「ユイちゃん……そこに、いるんだね……。わたしの……ユイちゃん……」
ふたたび、とめどなく涙が溢れ出した。
ぼやける光の中で、アスナに答えるように、クリスタルの中心が一回、強くとくん、とまたたいた。
[8]
前話
[9]
前
最初
[1]
後書き
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ