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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
ユイの正体
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剣の渦を身にまとったユイが、轟音とともに空中を突進していく。

影達は、自分よりはるかに小さな少女を恐れるかのように両手剣を前方に掲げ、防御の姿勢をとった。

そこに向かって、真っ向正面から数百の火焔剣が隕石のように降り注いだ。
 
一際激しく炎を噴く刀身が、横に掲げられた両手剣の柄とあちこちで衝突した。その輝きで、通路が外のように照らし出される。
 
と思う間もなく、再びユイの火焔剣が動き始めた。

途方も無い熱量で金属を灼き切るがごとく、じわじわと影達の持つ巨大な両手剣の柄に発光する刃が食い込んでいく。

ユイの長い髪とワンピース、そして影達が体に纏っている漆黒のマントが千切れんばかりの勢いで後方にたなびき、時折飛び散る巨大な火花がダンジョン内を明るいオレンジ色に染め上げる。
 
やがて───
 
轟、という爆音とともに、とうとう剣が真っ二つに断ち割られた。

直後、いままで蓄積していたエネルギーすべてを解き放ちながら、炎の柱と化した剣がダークローチの頭蓋骨の中央へと叩きつけられた。

「!!」
 
アスナとキリト、レンは、その瞬間出現した大火球のあまりの勢いに、思わず目を細めて腕で顔をかばった。

ユイの剣が完全に影達の体を貫通すると同時に火球が炸裂し、紅蓮の渦はゴキブリ達の体を巻き込みながら通路の奥へとすさまじい勢いで流れ込んでいった。大轟音の裏に、かすかな断末魔の悲鳴が響いた。
 
火炎のあまりのまばゆさに思わず閉じてしまった目を開けると、そこにはもうボスの姿は無かった。通路のそこかしこに小さな残り火がゆらめき、ぱちぱちと音を立てている。

その真っ只中にユイ、そしてマイだけが俯いて立ち尽くしていた。

床に突き立った無数の火焔剣が、出現したときと同じように炎を発しながら溶け崩れ、消滅した。
 
レンはいつの間にか地に着いていた膝を地面から引き剥がす。

傍らではアスナが、ようやく力の戻った体を起こし、細剣を支えにゆっくりと立ち上がっていた。わずかに遅れてキリトも立つ。

三人はよろよろと少女達に向かって数歩あゆみ寄った。

「ユイ……ちゃん……」

アスナがかすれた声で呼びかけると、少女はゆっくりと振り向いた。

小さな唇は微笑んでいたが、大きなふたつの瞳にはいっぱいに涙が溜まっていた。
 
ユイは、じっとアスナとキリト、そしてレンとマイを順に見つめると、やがて口を開き、ゆっくりと言った。

「パパ……ママ……。ぜんぶ、思い出したよ……」










王宮地下迷宮最深部、安全エリアとなっている正方形の部屋。

入り口は一つで、中央にはつるつるに磨かれた黒い立方体の石机が設置されている。
 
アスナとキリトは、石机にちょ
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