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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
ユイの正体
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しいか。
──と、不意に、傍らに立つ二つの人影があった。小さなその姿。
艶やかな黒髪と、透き通るような純白の髪。背後にいたはずのユイとマイだった。二人とも、恐れなど微塵もない視線でまっすぐ影達を見据えている。
「「「───なッ!!」」」
レン、キリト、アスナが同時に悲鳴を上げる。今すぐ助けに行きたい。
だが、できない。
今、レン達が急に動けば、この緊迫した状況はたちまちのうちに瓦解するだろう。そうなればあの数からマイたちを救い出すことは絶望的な確率になるだろう。
「ばかっ!!はやく、逃げろッ!」
隣のキリトが必要最小限の声で、かつ悲鳴のように叫ぶ。暗黒のゴキブリどもは、着実な速度でマイとユイを取り囲みつつある。
あの鋭利な両手剣で集団で斬りつけられれば、マイやユイのHPは確実に消し飛んでしまう。
アスナもどうにか口を動かそうとしたみたいだが、唇がこわばって言葉が出ない。
だが、次の瞬間、信じられないことが起こった。
「だいじょうぶだよ、パパ、ママ」
言葉のあと、ユイはマイを見た。マイは頷く。ユイもそれに頷き返したのと同時にマイの体を地上に残し、ユイの体がふわりと宙に浮いた。
ジャンプしたのではない。見えない羽根で舞い上がるように移動し、二メートルほどの高さでぴたりと静止した。
次いで、右手を高くかかげる。
『All over objectaise 《Object Eraser version:Flare−sword》』
滑らかな英単語の羅列がユイの口から流れると同時に、ごうっ!!という轟音と共に、ユイの右手を中心に紅蓮の炎が巻き起こった。
炎は一瞬広く拡散したあとすぐに凝縮し、細長い形にまとまり始めた。
みるみるうちにそれは鋭い剣達へと姿を変えていく。焔色に輝く刀身が炎の中から現れ、後方へと伸び続ける。
やがてユイの周囲に出現した数百の剣は、優に彼女の身長を上回る長さを備えていた。熔融する寸前の金属のような輝きが通路を照らし出す。
剣の炎にあおられるように、ユイの身に着けていた分厚い冬服が一瞬にして燃え落ちた。
その下からは白いワンピースが現れる。不思議なことに、ワンピースも、長い黒髪も炎に巻かれながらも影響を受ける様子は一切無い。
そして、ユイはその炎に照らされながらも手を上に上げ──
「ふッ!」
鋭い呼気を吐きながらユイは手を振り下ろす。その動作と同時に、宙空に浮かんでいた炎の剣が恐るべきスピードで影達へと撃ちかかった。
あくまでメインシステムが単純なアルゴリズムに基づいて動かしているにすぎないボスモンスター達、その血走った眼球に、レンは明らかな恐怖の色を見た───ような気がした。
炎の
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