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ヴァレンタインから一週間
第14話 俊扇登場
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は調べ上げているのでしょうか」

 ごく自然な雰囲気。今日の天気の様子を聞いて来るかのような自然な雰囲気で、とんでもなく大きな質問をして来る和田亮と名乗った青年。

 行き成り宇宙的規模の話に成りましたが。宇宙誕生と言う事は、百三十七億年ほど前の出来事だったはずです。それと同時に誕生した存在と言うのは……。
 はじめに光りありき。ヨハネの福音書に語られる言葉。そして、創世神話には光あれと記述されている始まり。それと同時……つまり、ビックバンと同時に誕生した存在だとするのなら、それは……。

 これは、長門有希を造り上げた存在は、世界で最も有名な本に描かれた御方と互角の存在と言う事に成ります。……と言う事は、矢張り、情報統合思念体と言う存在は、高次元意識体と言う事に成りますか。

 しかし、有希は首を横に振る。これは否定。
 いや、それは流石に不自然でしょうが。

「有希。そのキョンと言う人物を監視するのがオマエさんの任務なんやろう?」

 思わず口を突いて出て仕舞った俺の問いに対して、視線を俺の方に移した有希が少しの逡巡の後、小さく首肯いた。
 少しの逡巡の意味が良く判りませんが、肯定されたと言う事は、彼女の任務がその人物の監視任務で有るのは間違いないでしょう。

「しかし、有希はその人物の本名を知らない。本名を知らない人物の監視任務って、普通に考えて、不自然と思わないのか?」

 そもそも、その相手の通称しか知らないって……。
 其処まで考えた後、少し冷静に成って、別の可能性から考え直してみる俺。そう。良く考えて見ると、相手が確実に普通の人間だとは限りませんでしたか。
 何故ならば……。

「成るほど。そのキョンと呼ばれる相手は普通の人間では無く、何らかの強力な魔法を身に付けた存在と言う事か。確かに、魔法などの異能で異常な世界に身を置く存在は、本名を知られない為に、その手の魔法を使用する事が有る」

 基本的には呪詛などを防ぐ意味からも、本名を知られるのは問題が有る場合も有りますか。まして、高次元意識体から興味を持たれる存在ですから、その程度の小細工を行わない訳は有りませんね。
 もっとも、本来は偽名を使用すれば問題はないので、其処まで複雑な事を為さねばならない理由はない、……とも思うのですが。
 其処。通称のみで生活を続ける、と言う行為に、何らかの呪的な意味がない限りは。

 しかし、有希はゆっくりと首を横に振る。そして、

「彼はごく一般的な中学生。この四月より、県立の北高校に進学する」

 そのキョンと言う存在の本名を知らない事に何の疑問も感じていない雰囲気で、そう答える有希。

 ……………………。
 その瞬間、俺の背中に、何か冷たいモノが当てられたような気がした。
 そう。
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