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シャンヴリルの黒猫
27話「魔道士」
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こ得意であったりするのだ。それの逆もまた然り。

 それらを踏まえて、攻撃魔道士たちは自身のことを炎魔道士や水魔道士、風魔道士などと呼称する。ユーゼリアが訪ねているのは、このことだった。

「特にこれといって得意な属性(もの)はないんです。全属性同じくらい行けます…が、よく使うのは、そうですね、やっぱり火でしょうか。威力も高いし」

「すごいわね! 私は風しか使えないのよ。…ねえクオリ、魔法教えてくれないかしら」

「構いませんよ。じゃあユーゼリアさんは水にも適正がありますね。明日、少しご教授します」

「ありがとう! 旅路でこつこつ覚えてたんだけど、独学じゃ全然うまくいかないの。それから、私のことはリアでいいわ。ユーゼリアの愛称だから」

「はい。任せてください、リアさん。こっちは本職なので、色々と教えられることもあると思いますから」

「ほんとは“さん”もいらないんだけど……まあいいわ。よろしくお願いします!」

 そんな会話が繰り広げられている間、アシュレイはというと、

(そういえば俺が魔法使えること、ユリィは知らないんだったな…。どうしよう。言う機会を逃しているが、これは言わない方がいいのだろうか……)

 ひとり悶々と考えていた。
 ふっと顔を上げると、ユーゼリアと目が再び合う。その目にまたねだるような光が浮かんでいるのを見て、苦笑とともに肩をすくめた。好きにしろ、という意味である。

「ねえねえ、クオリ。ものは提案なんだけど……」

「なんでしょう」

「これから先、行くあてもないなら、一緒に旅をしませんか?」

「えっ」

 飲んでいたコップの水が、揺れた。その目に僅かな動揺が走る。

「……それは、臨時で、ですか」

「違うわ。ずっとパーティを組んでいたいの。もちろん強制じゃないし、抜けたいと思ったらいつでも抜けて構わないけど…でも1つの依頼を受けるだけのパーティとか、そういうのじゃなくて。気が合うなら、ずっと」

 クオリが水を飲み込んだ。静かにこちらを見つめる。その瞳はアシュレイに「なぜ貴方は止めないの」と語っていた。

「何故か? それは反対意見が特にないからさ」

「わたしはっ」

 ガタッと立ち上がると、周囲の視線を集めた。もう客の多くは食事を終え、談笑しているのみだ。突然大きい声を出して立ち上がれば、周囲の目を引くことは必然だった。それにクオリも気づくと、アシュレイに目で問いかける。

「ああ。ユリィは信頼に値するよ。真面目だからな」

「……分かりました。信じましょう。リアさん、貴女に見てもらいたいものがあります。私の部屋に来ていただけませんか。パーティの誘いは、それを見てから考えて欲
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