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渦巻く滄海 紅き空 【上】
四十九 追跡者
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せならこっちが有利……」
「そりゃ駄目だ」
ナルの考えにサクラも賛同するが、その提案はシカマルによって却下された。

「確かに待ち伏せはこちらにとって有利だが、それには二つの必要条件がある」
納得いかないと顔に書いてあるナルとサクラに、彼は解りやすく説明し始めた。人差し指を立てる。

「その一・逃げ手は決して音を立てずに行動し、先に敵を発見する。その二・追手の不意を狙う事ができ、確実な痛手を負わせられる点と位置を獲得し、素早く潜伏する…」
二つ立てていた指を握り締め、シカマルは枝を蹴った。木々が生い茂る中、声を潜めて説明を続ける。

「この両方が確実に為されて、初めて待ち伏せは有効な戦術と成す……忍犬の鼻があるからその一の条件はなんとかクリア出来るとしても、」
そこで言葉を切って、シカマルはその場の顔触れを確認した。わざとらしく嘆息する。

「(偶にすげえけど)基本おバカに、大した取り得のないくノ一に、犬一匹…それに逃げ腰ナンバーワンの俺だぜ?」
むすっと唇を尖らせるナルから顔を逸らす。正直言いたくはなかったが、彼女を納得させるにはこれぐらいが丁度良い。それにお馬鹿なのは事実である。

「戦略ってのはな。其処になる状況を確実に掴み、最善策を練る事だ…今の俺達に出来るといえばただ一つ、」
一瞬、シカマルの眼がナルを捉える。その真剣な眼差しに、不思議そうな顔でナルは首を傾げた。
顔を前に戻す。だが彼の眼は何かを決意したかのような強さを湛えていた。きっぱり言い切る。


「待ち伏せに見せ掛けた、陽動だ」

一人が残り、足止めする。その間に他の者達を逃がす。つまりは囮である。
足止めが成功すれば、追手を撒ける。しかしその代償は……。

「ま、死ぬだろ〜な」
何の気も無しに発せられたシカマルの一言に、二人と一匹の顔が強張った。自然と足が重くなる。
とうとう木の枝で立ち止まった彼らの間では気まずい空気が流れていた。虫の羽音が聞こえるくらいの静寂がその場に降りる。
忍犬はサスケの足取りを掴むのに必要なのだ、と三人ともが理解していた。


気まずい沈黙を消すように、ナルが大きく口を開く。わざと明るい声で「オレが…、」と言った彼女の言葉をシカマルが遮った。

「俺がやるしかね〜か」

軽くそう告げたシカマルが背を向ける。驚愕するサクラの傍ら、ナルは大きく目を見開いた。


「だ、ダメだってばよ!!」
「囮役を充分こなせて、且つ生き残る可能性があるのは、この中じゃ俺だけだ。それに【影真似の術】は元々足止めの為の術だからよ」
「でも…ッ!だ、大体シカマル試合したばっかじゃんか!!チャクラ残ってねえんじゃ…」
「そりゃ、お前もだろ〜が。…――後で追い付くからよ。とっとと行けって」
シカマルに言い含
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