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東方守勢録
第十二話
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断はできなかった。


(残り2分……)


俊司はスペルカードの発動時間を気にしながら後ろを見る。だが、そこには誰もいない。

なんとか逃がすことに成功したんだと俊司は一瞬ホッとしたが、安心はしていられない。とにかく目の前の敵を倒すそれだけに集中していった。




「全部隊!一斉掃射を開始しろ!」




向こうの革命軍はもう半分やけくそなのか、前兵士が一斉に発砲を始める。

だが今の俊司にとっては、ただの無駄うちにすぎなかった。

強化された視覚は、高速で飛ぶ弾丸ですらきちんと捉えていた。そこから脳へと情報が渡り弾丸の軌道を予測。あとは強化された身体能力で行動。

一連の作業をまるで流れ作業のように俊司はこなしていた。





だが、もう余裕など言ってられる状態ではなかった。






(たぶん……これがラストチャンス……)


スペルカードの発動時間がついに限界に達しようとしていた。

とにかく一人でも多くの兵士を倒す。俊司はそれだけを考えて再び行動を開始する。


「うおおおおっ!!」




パパパァン!!




三人の兵士をしとめた俊司は、再び木の裏に隠れる。

そして、同時にスペルカードの効果はなくなり、ゆっくりと失っていた聴覚が戻り始めていた。



「ここまで……なのか?」



俊司は無意識にそう呟いていた。

今出てしまっては、人数差を考えると確実にただの的になる。このまま殺されてしまうのか、それとも捕まってしまうのか、俊司の心は次第に恐怖によって埋め尽くされそうになっていた。


(怖い……ここに来て何度も恐怖に見舞われたけど……今回は心が押しつぶされそうだ……)


震える手足をなんとかして止めようとするが、体が言うことを聞かない。

そんな彼にゆっくりと魔の手がせまってくる。


「少年!そろそろ降参したらどうだ!この人数差、貴様でも勝ち目はないはずだ!!」

「……くそっ」


勝ち目がない、それはとうに分かっていたことだった。

だが、勝ち目がなくてもやらなくてはならないこともある。自分がここに残ることでみんなが助かるならそれでいい。俊司はそう決心していたのだから。


(あまり使いたくないけど……使うしかない……か)


俊司はポケットから一枚のスペルカードを取り出すと目の前に掲げた。


「あと五分ほど……悪あがきをさせてもらうか!」


そう言って俊司はゆっくりとスペルカードを発動させた。








変換『感情の真骨頂』
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