第三幕その三
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第三幕その三
「僕でよかったら。聞くから」
「ええ・・・・・・うっ」
そしてまた咳き込んだ。激しく、辛そうな咳だった。
「大丈夫かい?」
マルチェッロはその咳き込む様子を見て声をかけた。
「それに顔も青いけれど」
「最近少し身体が」
その青い顔で答えた。
「おかしいの。前からあまりよくはなかったけれど」
「まさか」
ショナールはそれを聞いて不吉な顔になった。
「ミミは」
「どうしたんだ、ショナール」
コルリーネはその暗くなった顔の友人に問うた。
「急にそんな顔になって」
「若しかしたらな、コルリーネ」
彼は友人に対して言った。
「ミミは」
「おや」
ここでマルチェッロは店の方に顔を向けていた。そして声をあげた。
「あいつが。起きたぞ」
「もうか」
「殆ど寝ていないっていうのに」
三人は店の中を見ながら言った。見れば窓の方で誰かが起き上がっていた。
「ロドルフォが」
「ここは部屋に帰った方がいいよ」
マルチェッロはミミを宥めるようにして言った。
「今の君は。ベッドの中で静かにしていた方がいい」
「けれど」
「いや、本当に」
それでも彼はミミを帰らそうとした。
「寒いしね」
ミミは応えなかった。だが三人はそんな彼女をあえて帰らせようとする。そしてカルチェ=ラタンの方に案内した。
だが彼女は戻って来た。こっそりと紀の陰に隠れて店の方を伺うのであった。
ロドルフォは店の外に出て来て三人に声をかけた。
「皆そこにいたのか」
「ああ」
三人は彼に声をかけた。
「まだ暗いし。雪まで降っている」
「冬だからね」
「冬のパリの朝ってやつさ」
「そうか。芸術的ではあるね」
「そうだね」
「ところでロドルフォ」
マルチェッロが彼の側まで来た。
「聞きたいことがあるんだ」
「聞きたいこと?」
「うん。どうして今夜ここに来たのかね」
彼を友人に目を向けて言った。細やかに問う目であった。
「何があったんだい?」
「別に何もないさ」
だが彼はこう返して誤魔化した。
「何もね」
「本当にそうなのかい?」
マルチェッロはあえてこう尋ねた。
「本当に何もないのかい?」
「勿論だよ」
ロドルフォはこう返した。
「何を言ってるんだよ」
「ミミと上手くいっていないのかい?」
「それは」
図星なのはわかっていた。ロドルフォの表情が強張った。
「それは」
「やはりそうか」
「何かあったんだな」
コルリーネも声をかけてきた。
「よかったら話してくれないか」
「ミミとは。もう駄目なんだ」
彼は友人達に俯いてこう言った。
「あんな浮気だとは思わなかったから」
「浮気!?」
「そうさ。誰にだって色目を使うし。顔を向ける
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ