第八章
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「あまり強くしないでね」
「すいません、つい」
「謝らなくていいけれどね」
ここでもフォローは忘れなかった、愛生は今も気弱なままだった。
だが試合には勝つことが出来二人の確かな絆が出来た、ゆかりにとっては最高の流れになっていた。それで愛生とはプライベートでも仲良くなっていった。
この日は二人で百貨店で買い物をしていた。愛生が着替え室に入りゆかりが一人になるとここでまた、だった。
沙耶香が不意に出て来た、そして誘う様な、夜の中からそうする笑みでゆかりにこう言ってきたのである。
「機会があってよかったわ」
「偶然会ったとは思えないですけれど」
「偶然よ。実はデート中だったのよ」
見れば沙耶香の横には女子大生と思われる女の子がいた、しかも三人だ。
沙耶香その三人の女の子達を見ながらゆかりにこう言うのだった。
「楽しんでいるのよ」
「女の人達とですか」
「私はどちらでもいいのよ」
男でも女でもだというのだ。
「最近、いえ実際は殆どが女の子だけれどね」
「デートのお相手は」
「そうよ。まあ今は私も相手がいるから貴女には言わないけれど」
「言わないって」
「気付かないのならいいわ」
ゆかりがこうしたことに疎いことがわかってきたのでそれはもういいとした。
「とにかくね」
「はい、今の私はですね」
「いい感じね。もう吊るし人ではないわね」
それではなくなっているというのだ。
「二人で歩けているわね」
「あの娘とですね」
「ええ、確かにね」
「いい娘です」
ゆかりはにこりと笑って沙耶香に愛生のことを話した。
「素直で真面目で謙虚で」
「j本当にいい娘みたいね」
「はい、何か一緒にいて」
「貴女も顔が明るくなったっていうのね」
「吊るし人の逆でしたね」
「カードね」
「それはそうでしたよね」
「貴女が見た通りよ」
それはそのままだというのだ。
「吊るし人の逆だったでしょ」
「そうでしたね、苦労はしていても」
それでもだった、そこは。
「次第にそれが楽になっていって」
「最後は吊るされた、逆だから縛られている状況からね」
「解放されるんですね」
「実際にそうなったみたいね」
「はい、けれどそれは私一人じゃなかったです」
このことはゆかりにとっては予想外だった、それで沙耶香にこう言うのだった。
「あの娘もいてくれて。けれど」
「けれど?何かしら」
「あの、吊るし人は縛られていない片足から自分で抜け出すじゃなかったんですか?」
ゆかりは自然と怪訝な顔になっていた、その上での言葉だった。
「あの、それは」
「一人じゃないといけないとは一言も言ってないわよ」
「えっ!?」
「誰かが助けてくれる場合がないとは言ってないわよね」
「そういえば」
「人
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