第六章
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「いつも迷惑ばかりかけて」
「迷惑じゃないわよ」
苦労や疲れは感じているがそれは感じていないのだった。
「安心してね」
「それだったらいいんですけれど」
「余計な心配しないでね。それでだけれど」
ゆかりは愛生のフォローをしてからあらためて彼女に言った。
「最近の宮迫さん、いえ愛生ちゃんだけれど」
「私がですか」
「動きが一層よくなってきたし」
それにだというのだ。
「落ち着いてきたわね」
「だったらいいんですけれど」
「実際にそうなってるわよ。やっぱり練習を続けてるからね」
「それでなんですね」
「ええ、日増しにいい感じになってるから」
「だからですか」
「このまま二人でやっていきましょう」
また言うゆかりだった。
「そうしたら一層よくなるからね」
「そうですか。それだったら」
「二人で練習していくわよ」
「はい」
愛生は素直に応える、ゆかりが彼女をリードしてそのうえで二人で練習していった、そして練習試合に出てもだった。
いい感じに動けた、だが。
愛生は躓くことはなくなった、しかしダブルスの前にいる彼女は試合に対して怯えがあった、部長はその彼女を見て試合の間の休憩時間にゆかりにそっと囁いた。
「危ないわよ、あの娘」
「試合慣れしてないですね」
「怯えてるわね、だからね」
「いざという時にですね」
ゆかりは自分のタオルで汗を拭きながら部長に応える、部長はもう自分の試合で快勝しておりそのことでは満足していた。
だが試合に対して怯えがある愛生のことをこう言うのだった。
「動きにも出るから。実力はあるけれど」
「それでもですか」
「やれないって思ったら駄目なのよ」
それで終わりだというのだ。
「やれるって思わないと」
「今のあの娘に一番足りないものですね」
「だからね」
部長はあらためてゆかりに言った。
「ここでもあの娘をリードしてあげてね」
「はい、わかりました」
ゆかりも部長の言葉に確かな顔で答える。
「少し言います」
「そうしてね。いつも貴女には苦労をかけるけれど」
「苦労ですか」
「希望のシングルにも出てないし」
部長もそのことは申し訳ないと思っていた、ゆかりの希望を退ける形になってしまっているのは事実だからだ。
「それで一年の娘の教育係もしてもらって」
「それが苦労っていうんですね」
「ええ、かなり負担になってるわね」
「本当のことを言っていいですか?」
ゆかりは小声で部長に言った。
「ここで」
「ええ、いいわよ」
部長も小声でゆかりに応える。
「そうしてね」
「はい、それじゃあ」
ゆかりは部長の言葉を受けてそうしてだった、その本音をここで話した。
「最初はそう思っていました」
「最初は、なの」
「はい
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