第一章
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堕天使の誘惑
若い天使カトエルはこの時ぼやいていた。穏やかな天界の雲と宮殿の中でそうなっていた。
彼はうんざりとなった顔でこう言っていた。
「全くなあ。毎日毎日仕事で」
「おい、いきなりどうしたんだ」
「神への不満か?」
「神へのことじゃないよ。仕事についてだよ」
彼の不満の先はそれだとだ、彼は同僚達に言うのだ。
「人間を彼等が知らないうちに助けたり天罰を与える。それがね」
「毎日毎日だからかい」
「疲れてるんだね」
「何か楽しいことないかな」
カトエルはぼやきながら言う。
「人間みたいに楽しめることが」
「じゃあ野球をするかい?人間界で人気の」
「それはどうだい?」
「野球ねえ。何度もやってね」
カトエルは野球を勧められたが浮かない顔で返した。
「飽きたよ」
「じゃあサッカーはどうだい?」
「それかバスケは」
「どっちも飽きたよ」
そういったものもだというのだ。
「クリケットもアメフトもね」
「何か球技は全部なんだね」
「飽きたんだね」
「うん、飽きたよ」
その通りだというのだ。
「もうね」
「何か遊ぶことはか」
「飽きたんだな」
「天界の遊びはね」
天界にも遊びはある、だが健全な遊びしかない。
そしてカトエルはそうした遊びに対して全て飽きたものを感じていた。だからこそここでこう言ったのである。
「面白い遊びがねえ」
「飽きたっていうんならね」
「僕達も言えないね」
「どれがいいかは」
「ちょとね」
「そうだよね。参ったね」
また言うカトエルだった。
「これから何をして余暇を過ごそうかな」
「食べるとか寝るとか?」
「そういうのしかないんじゃないかい?」
「そうかもね。参ったね」
カトエルは今の事態にこう言うしかなかった。このやるせなさというか閉塞感は仕事にも影響して惰性でやっている感じになっていた。この日もだった。
溝に落ちそうになっている女の子を横にやった、そうしてだった。
やれやれといった顔で溜息をついて述べた。
「何かなあ」
「おいおい、どうしたんだい?」
その彼に後ろから声がしてきた。
「元気がないねえ」
「その声は」
カトエルが後ろを振り向くと黒い翼に陰のある顔立ちの天使がいた、彼はその天使を見て顔を顰めさせて言った。
「堕天使サトエル」
「久し振りだな」
「何だ、御前か」
「御前呼ばわりは酷くないかい?昔馴染みじゃないか」
「堕天使が何の用なんだ」
カトエルはその不機嫌jな顔でサトエルに返す。
「天使に対して」
「いや、君があまり元気がないんでね」
「それが御前に関係あるのかい?」
「ないけれど気になってね」
それで言う彼だった。
「声
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