第五章
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「試合が出来るのがな」
「本当にそう思ってるのかよ」
「あの人引退して十年以上経つぜ」
「四十近いんだぞ」
最早ボクサーの年齢ではないことは明らかだ。
「しかも結構脂肪もついてたしな」
「それでカムバックしてあんたと試合をするってな」
「無理だろ」
「幾ら何でも」
「いや、やろうって思ってな」
それでだというのだ。
「やる、そしてな」
「やり遂げる」
「それが真のチャンピオンだろうな」
こう言うのだった。
「今わかったことだけれどな」
「真のチャンピオンか」
「それって勝ち続けることじゃないのか?」
「そうじゃないのか」
「違うんだろうな。やろうって思ってな」
ハルトマンは二人を見ながら話す、彼だけはわかっている、その顔だった。
「そのことをやり遂げる人がな」
「チャンピオンか」
「本当のなんだな」
「俺もやるか」
今度は意を決した顔になるハルトマンだった。
「あの人と試合をする為にな」
「おいおい、今のチャンピオンはどうしたんだよ」
「ホークがカムバックして今のチャンピオンと試合が出来るっていうのかよ」
「そんな夢みたいなことが実現するってか」
「お互いどうしたんだよ」
周りはハルトマンにも呆れるばかりだった、だが。
ホークはホワイトと共にトレーニングを続け遂にだった。
プロのライセンスを再び習得した、それに。
試合も次々と行い勝ち進んだ、それはまさに破竹の勢いだった。
身体は現役時代と同じく引き締まったものになり動きもその頃と遜色ないまでになっていた、その彼に対して。
ホワイトは試合前の食事、パスタ等の炭水化物のそれを共に食べながら言ったのだった。
「いい感じだな」
「ああ、トレーニングを積んでるからな」
「それだけじゃないな」
「勘も取り戻せてきた」
ホークはフォークでトマトとガーリック、マッシュルームのスパゲティを食べながらホワイトに対して答えた。
「試合のな」
「それが戻るとな」
「ああ、違うからな」
「身体のキレも戻ったしな」
「やれる、いややってやる」
ホークは食べながら決意を見せる。
「最後の最後までな」
「そうだな、じゃあ俺もな」
「付き合ってくれるんだな」
「セコンドは何の為にいるんだい?」
ホワイトは笑ってホークに問うた。
「ボクサーをサポートする為だろ」
「それでか」
「若しハルトマンとの試合になれば」
その時はだというのだ。
「あんたのセコンドにもあいつのセコンドにもな」
「つけないか」
「どっちのセコンドでもあるからな」
だからだというのだ。
「ここは公平にな」
「そうか、じゃあその時は」
「見守らせてもらうさ」
これが彼のその時の選択だというのだ。
「その試合をな」
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