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ラ=ボエーム
第二幕その七
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「さあ、来たぞ」
「戻って来たか?」
 ロドルフォ達はその声に顔を向ける。だがやって来たのは顧問官ではなく兵士達であった。店の前までやって来たのである。
「なあ」
 ここでショナールが一同に提案した。
「まあ勘定はここに置いておくといい」
「後は顧問官殿のおごりか」
「そうさ。そして僕達はこの間に逃げよう」
「うん」
「兵隊さんにでも紛れてね」
「兵隊さん達にか」
 見れば堂々と行進している。
「何、兵隊さんの仕事は僕達を守ってくれることさ」
「暴徒や叛徒からね」
「僕達がそうでないということの保証が必要だけれどね」
 昔から、そう革命の頃からフランスの軍隊は市民に対して銃口を向けているのだ。もっぱら暴徒化した場合だが革命の際に恐るべき政治手腕を発揮したナポレオンの警察相フーシェは叛乱を起こした街の鎮圧に人口の一割を処刑すると定め、それを躊躇無く実行に移した。この時彼がジャコバン派にいた為の行動であったがこうしたことも度々あった。ナポレオンにしろ反乱鎮圧に暴徒化したとみなされる一般市民に大砲を放っている。これより十年前にも革命があったがその時も同じであった。どちらにしろフランス軍は一般市民にも銃を向けることがある軍なのである。もっともこれは大抵の国においても同じであるが。アメリカにしろウイスキー一揆で大々的に兵を送っている。また一揆や革命では実際に暴徒が暴れるものである。治安維持の為には必要な場合もあるのである。
「とにかく人垣もあるし」
「そこに紛れ込むか」
「ムゼッタ、君も来るんだろう?」
「ええ」
 彼女はマルチェッロの言葉に頷いた。

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