第二章
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「本当にね」
「遺伝なのは聞いてるけれど」
それでもだというのだ。
「ちょっとね」
「嫌?」
「子供の頃本当に思ったから」
どう思ったかというと。
「私この家の子供かって」
「一人だけ若作りじゃないからだな」
父が言う。
「そうだな」
「そうよ」
まさにそれでだった。
「私違うんじゃないかって」
「安心しろ、それはない」
父は娘に対して断言した。
「何があってもな」
「DNA鑑定してもよね」
「御前は父さんと母さんの娘だ」
それは間違いないというのだ。
「そもそも双子だったしな」
「それはわかるけれど」
「じゃあいいだろ」
「いや、違うから」
姉を見ながらまた言う直美だった。
「私だけ老けてるっていうか」
「いや、姉ちゃん老けてないよ」
「安心していいよ」
弟達が横から姉に言う。
「ちゃんと歳相応だから」
「女子高生に見えるよ」
「私だけね」
直美の言葉には棘があった。
「何で私だけ一家の中で」
「全くね、直美ちゃんもね」
姉の良美はここで姉として言った。
「そんな小さなこと気にしなくていいのに」
「あのね、お姉ちゃんと一緒にいる時は」
「いつもお姉ちゃんは直美ちゃんって言われるよね」
「酷い時はお母さんかって」
本当に言われたことがある、直美にとってはトラウマの一つだ。
「酷い言葉よね」
「だから気にしないでいいのに」
「お兄ちゃんといる時だって」
直美は歯噛みしながらまた言った。
「全く、私だけっていうのも」
「まあまあ。御飯食べて元気出してね」
「気を取り直るんだな」
両親は親として娘に温かい言葉をかけた、家族は優しかった。
だが直美の気は晴れない、それでだった。
クラスでもぼやく、その直美にクラスメート達は言う。
「だから言っても仕方ないじゃない」
「良美ちゃんはロリだから」
「お母さんも合法ロリだから」
「規格外の相手と比べてもね」
「どうしようもないじゃない」
「そういうのじゃないのよ。私だけよ」
直美は非常に辛い感じの口調だった。
「私だけ、私だけがどうして家族の中で歳相応なのよ」
「家族は皆若作りの中で自分だけ」
「そう言うのね」
「そうよ。どうすればいいのかしら」
直美の言葉は切実なものだった。
「ここは」
「そうね、直美ちゃんは背はあまり高くないから」
クラスメートの一人であり若林瑠璃子が言う。大きなくりくりおとした目に小さな口ではっきりした顔立ちの少女だ。歳相応の顔である。
「これはいいわよ」
「小柄なのがいいの?」
「小柄はロリの元よ」
瑠璃子はこう言い切った。
「一六〇と一五〇でどちらがロリに見える?」
「それは一五〇の方が」
直美はすぐに答えた。
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