第二幕その六
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第二幕その六
「君の学問でもこれは読めないかね」
「僕は哲学者なんでね」
コルリーネは気取った声で応えた。
「人の心はわかるつもりさ」
彼も完全な朴念仁ではないようだ。
「彼女が美人だってこともね。けれど」
「けれど。どうしたんだい?」
「今の僕は美人よりもギリシアの古典とパイプの方がいいね」
「やれやれ、神話の美人がお好みか」
「勉強にはなるよ」
「さてと」
ムゼッタは言葉を終えてチラリとアルチンドーロを見た。
「この人ともそろそろ」
そう呟いて椅子に座り込んだ。
「足が痛むわ」
「どうしたんだい?」
アルチンドーロはそう言って足に手を当てるムゼッタを心配して声をかけた。
「ズキズキするわ」
「そんなに。何処がだい?」
慌てて彼女の方に近寄る。
「靴が合わないのよ」
そして彼女は足をわざと客達、その中でもとりわけマルチェッロに見せながら靴の紐を解く。白い腿までが見えそうになる。
「こんな靴じゃ」
そう言いながら脱いだ。
「もう歩けないわ。他の靴が欲しいわ」
「幾ら何でもこんなところで脱ぐなんて」
「早く新しい靴を買ってきて」
だがムゼッタはやはり彼の言葉には構わない。
「そんな無分別な」
「分別もパリジェンヌが作るのよ」
それでもこの調子でやり返す。
「パリの女は常に正しいのよ。それを疑うの?」
「それはわかったら早く買って来る!いいわね」
「わ、わかったよ」
アルチンドーロはたまりかねて頷いた。
「それじゃあ行って来るよ」
「行ってらっしゃい」
素っ気無く、冷たい言葉で送る。そしてアルチンドーロが見えなくなるまでまずは動かなかった。
「さてと」
それが終わってからマルチェッロに顔を向けた。
「わかってるんでしょ?」
「ああ」
酒から口を離し答える。
「最初からわかっていたさ」
「やっぱり」
「君には勝てない。僕にはね」
「そっちに移っていいかしら」
「勿論」
ムゼッタはその言葉に従い動いた。靴が片方ないのにも構わず彼のいるロドルフォ達のいるテーブルに向かう。客達が彼女に椅子を差し出す。
「有り難う」
「パリの女王様の為なら」
男達は恭しい動作でムゼッタに一礼する。
「これ位のことは」
「じゃあマルチェッロ」
ムゼッタは座りながらマルチェッロに声をかけた。
「また。一緒に飲みましょう」
「うん」
これで全ては決まった。二人は乾杯しまた付き合うことになったのであった。その場を歓声と拍手が包み込む。
「これで舞台は終わりだ」
「最高のハッピーエンドだったな」
皆ムゼッタに喝采を送っていた。
「最初からこうすればいいのに」
「僕にも意地があるのさ」
マルチェッロはムッとした顔を作ってこう
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