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ラ=ボエーム
第二幕その六
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返した。
「男の意地がね」
「じゃあ私にも女の意地があるのね」
 ムゼッタも負けてはいない。
「そして私が勝った」
「負けてあげたのさ」
「あら、そうなの」
「まあ負けたことは認めるよ」
 その点に関してはマルチェッロも素直であった。
「君にね」
「お帰りなさい」
「只今」
 言う方が逆であったがこれでよかった。そしてそれを見守るロドルフォ達のところに店のボーイがやって来た。
「お勘定ができました」
「ああ、もうか」 
 ショナールが鷹揚な動作で頷く。
「さて、と」
 そしてその勘定を受け取る。見た途端に表情が一変した。
「な・・・・・・」
「どうしたんだい、一体」
 これに気付いたコルリーネが声をかける。
「酔いが急に醒めたみたいだけれど」 
 見ればショナールの顔が真っ青になっていた。さっきまでの赤ら顔は完全に消えてしまっていた。
「醒めたもこうしたもないよ」
 声まで青くなっていた。
「これを見てくれ」
「!?」
「ただのお勘定じゃないか」
 ロドルフォも覗き込む。すると二人は同時にその顔を青くさせショナールの後を追った。
「な・・・・・・」
「おい、これ」
 ロドルフォも声が青くなっていた。その青くなった声でショナールに問う。
「何だよ、この値段」
「こんなに食べたか?」
「多分あいつだな」
 ショナールはそう言いながらマルチェッロを指差した。
「マルチェッロが」
「さっきまでワインをがぶ飲みしていただろ?」
「ああ」
「それだ。その値段だよ」
「僕達の分もあるみたいだぞ」
 ショナールは勘定を読みながら言った。
「これを見ていると」
「で、問題はだ」
 ショナールはここで二人に対して言った。
「お金はあるかどうかだが」
「それだ」
「僕が稼いだお金だが・・・・・・ん!?」
 服のポケットを探し回りながら困惑した顔を浮かべる。

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