第一章
[2]次話
座敷わらし
東北ではよく言われることである。
ある家に座敷わらしがいると言われている、しかしその座敷わらしは。
「子供の頃は見えたんじゃよ」
「わしもだよ」
「私もよ」
家の者達は残念そうに言う。
「子供の頃はな」
「もう見えないよ」
「大人になったからね」
「だからね」
「残念だけれどね」
これは家の者達だけでない、村の大人達もだ。
皆子供の頃は見えた、しかし大人になるとだった。
見えなくなる、そうなっていたのだ。
皆そのことを残念に思っていた、だが子供達は違っていた。
「お父さんもお母さんもおかしなこと言うよね」
「うん、僕達皆一緒に遊んでるよ」
「それで見えなくなったってね」
「おかしなこと言うよね」
「本当にさ」
彼等は大人達の話を不思議そうに聞いていた、そして。
その座敷わらしに笑顔で言うのだった、彼等は共にいるのだ。
「皆おかしなこと言うよね」
「お兄ちゃんやお姉ちゃん達も言うし」
「皆座敷わらしちゃん見てるよ」
「その目にね」
「あっ、そのことはね」
黒いおかっぱ頭で赤い着物を着た女の子がにこりと笑って子供達に言う、この娘がこの村の座敷わらしだ。
座敷わらしは笑顔で子供達に言うのだ。
「皆もだよ」
「僕達も?」
「私達もっていうと」
「皆子供じゃなくなったら私が見えなくなるの」
言うのはこのことだった。
「そうなるの」
「嘘だよ、今見えてるよ」
「それで一緒に遊んでるじゃない」
「それで見えなくなるなんてね」
「絶対にないよ」
「皆そう言ってきたわ」
座敷わらしの言葉は変わらなかった。
「ずっと見えるってね。けれどね」
「本当に見えなくなるの?」
「僕達が大人になったら」
「そうなるの?」
「嘘よえ」
「私嘘は言わないから」
座敷わらしは嘘を言わない、そうした存在であると話している者はいない。
「だから今の皆もね」
「大人になったら見えなくなるんだ」
「そうなるの」
「そう、子供の間だけなの」
座敷わらしが見えるのはだ。
「その間ずっと楽しもうね」
「うん、それじゃあね」
「今から」
皆で笑顔で言う、そしてだった。
子供達は座敷わらし達と共に楽しんだ、だがだった。
それが出来たのは子供の間で次第に喉仏が出て赤飯を食べるとだった。
皆座敷わらしが見えなくなった、そして彼等の弟や妹達が言うのだった。
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