第二幕その五
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しら。そんな筈がないわよね」
そしてここで媚惑名笑みを浮かべる。
「ねえロドルフォ」
ミミはここでロドルフォに囁いた。
「何だい?」
「あの人だけれど」
ムゼッタを指差しながら言う。
「本当にマルチェッロが好きなのね」
「そうかな」
「だから。あんな風に言うのよ」
「けれど彼女は移り気でね」
ロドルフォはここでこう返した。
「贅沢な生活の為に彼を振ったんだ。それで今の彼女があるんだ」
「それでもよ」
ミミは言う。
「マルチェッロのことが本当に好きだから」
「けれど同時に贅沢も好きなんだ」
「けれど。今は贅沢よりもマルチェッロを見ているわ」
「また心変わりするだろうけれどね」
「そうかしら」
その言葉には悪戯っぽくとぼける。
「ムゼッタは何時でもそうなんだ。だからそうしたものだって考えた方がいいよ」
「私はそうは思わないけれど」
「まあ見ていなって」
ロドルフォは言った。
「これからどうなるかね」
「さてさて、罠が見えてきたな」
「ああ」
ショナールとコルリーネは互いに囁き合っている。
「一人は罠にかけ、一人はそれに落ちる」
「落ちるかな」
「何なら賭けるかい?」
「おいおい、そんなことは言ってないよ」
「何だ、面白くないな」
「それに結果は僕にもわかるし」
コルリーネは言った。
「そうか」
「私にはわかっているわ」
ムゼッタはまだ攻撃を仕掛けていた。マルチェッロにさらに言葉をかける。
「自分の苦しみを口には出さなくてもその中では死ぬ程苦しんでいるわね」
「ムゼッタ」
その話にたまりかねたのかアルチンドーロがたまりかねて言う。
「だからそんなに無作法なことは」
「パリジェンヌの動きそのものが作法なのよ」
だがそれには弱らずにこう返した。
「行儀も作法も私達が作ってるのよ」
パリジェンヌらしい言葉であった。
「だからつべこべ言わないの」
「そんな」
「本当に彼が好きなのね」
ミミはまた囁いた。
「可哀想な人。どうするのかしら」
「どうにもならないと思うけれどね」
ロドルフォはまた言った。
「燃え尽きた愛は戻らないし。侮辱を受けてそれに返さない愛なんてないから」
「けれど」
「僕はそれはないと思うけれど」
「私は信じるわ」
ミミは澄んだ声で言う。
「あの人はきっとマルチェッロを」
「負けるな、これは」
「ああ」
コルリーネはショナールの言葉に頷き続けていた。
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