第三章
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「歌えるからな」
「それも常にいるからね」
「これがワーグナーのテノールになるとそうはいかない」
「そう、ワーグナーは」
ワーグナーの話も為される。
「テノールがね」
「そうそう、ヘルデンテノール」
ワーグナーのテノールはヘルデンテノールという独特のテノールだ。低い声域で常に高音で歌うという役であるが為に。
「歌える歌手が少ない」
「あれはそうはいないよ」
「五人しかいないという言葉もね」
「そう、あながち嘘じゃない」
「ワーグナーは難しいよ」
ワーグナーはそうした面でも難しい、だがモーツァルトは。
「歌手のキャリアのスタートでも歌える」
「確かに高度の技量が要求される歌も多いけれど」
「それでも歌えるからね」
「それが不思議でありかつ魅力的なんだよ」
「うん、モーツァルトは凄いよ」
「まさに天才だよ」
「そうした音楽を残したんだから」
彼等がこう言うことにも根拠があった、そしてだった。
その中でまた話す彼等だった、今度の話題は。
「さて、最後だね」
「うん、果たしてマエストロの仰る通りか」
「モーツァルトは今も生きているのか」
「そして舞台にいるのか」
「カーテンコールにいてくれるのかな」
「出て来るのかな」
彼等はこのことを不安に思ってもいた。それでだった。
「モーツァルトならとは思うけれどね」
「何しろ今も多くの作品が上演されているし」
「死んでからも十年おきに全集が出されるからね」
そうした芸術家は少ない、他には二十世紀最大のソプラノ歌手と言われるマリア=カラス位であろうか。
「そんな歌手はモーツァルトだけだし」
「モーツァルトに端役はないし」
このこともいつも言われている。
「しかも音楽に駄作はない」
「一作もね」
だからこそ天才と言われている、モーツァルトは一切駄作を残さずしかもオペラにおいても端役がないのだ。
それだけの天才だからだ。
「ひょっとしたらね」
「モーツァルトは実際に出て来るのかも」
「私達の前に出てくれるかな」
「カーテンコールの時に」
彼等は固唾も飲んだ、そして。
そのうえで舞台を見ていった、そして遂にだった。
魔笛の舞台は大団円を迎えた、結末を見て誰もが拍手をする。
その中で彼等はそれを待った。
「いよいよだな」
「うん、カーテンコールだよ」
まさにその時になっていた。
「さて、いよいよだね」
「モーツァルトが出てくれるか」
「歌手やマエストロ達と一緒に」
「そうしてくれるかな」
彼等はそれが本当かどうか見たかった。そうしてだった。
そのカーテンコールの時だった、まずは歌手達が出て来る。
主役級の歌手達は何度も出て来て拍手を受ける、最高のカーテンロールだった。
ベームも出
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