第二幕その三
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ロドルフォがミミに応える。
「愛の喪中なんだ」
「喪中」
「おいおい、下らない話は止めてくれよ」
マルチェッロはここでロドルフォに対して言った。
「今宵はクリスマスなんだ。思い切り騒ごう」
「騒ぐか」
「そうさ、ワインをどんどん持って来てくれ」
またボーイに声をかけた。
「ランブルスコをだ。こうなったらとことんまで飲むぞ」
そして本当に派手に飲み食いをはじめた。まるで何かを忘れようとしているかの様であった。食べていると道の方が騒がしくなった。
「何だ?」
「国王陛下でも来られたのか?」
ロドルフォ達は冗談を交えて声をあげる。
「それとも大女優が」
「だとすれば誰だろうな」
だがそこにやって来たのは国王でも女優でもなかった。来たのは派手な紅の絹の服に帽子を身に着けた美しい女であった。
赤い髪にはっきりとわかる目鼻立ち、身体はダンサーの様に均整がとれている。黒い髪と瞳は周りを挑発し、惑わすかの様であり媚びる様な、それでいて誘う様な視線を辺りに放っている。
「あいつか」
マルチェッロはその女を見て顔を苦くさせた。
「まさかとは思ったがやっぱり来たか」
「どうしたの、一体」
「ムゼッタが来たのさ」
「ムゼッタ!?」
「知らないのかい?今最も有名なパリジェンヌだけれど」
「あまり」
ミミはロドルフォの言葉に首を傾げさせた。
「カルチェ=ラタンには殆ど来なかったから」
「だったら知らないか。彼女は酒場の女でね」
「ええ」
「派手なことでここじゃ有名人なんだ」
「そして」
「おい、言うのはよしてくれよ」
マルチェッロは憮然として言った。
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