第116話 劉協
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す。
危険な香りがプンプンとしてきました。
馬車から降りた場所から四半刻(三十分)くらい歩いた場所に豪奢な屋敷を発見しました。
張譲はその屋敷に向って歩いています。
あの屋敷に皇帝陛下が待っています。
人気が全くありません。
ここで暗殺劇が起こっても闇に葬りされそうです。
「劉将軍、着きましたぞ。皇帝陛下に許可をいただきに行きます故、しばしお待ちください」
張譲はいつになく恭しく私に挨拶すると、屋敷の中に入って行きました。
「揚羽、周囲に気をつけろ。張譲の様子が怪しい」
私は後ろに控える揚羽に背を向けたまま数歩下がり、彼女にだけ聞こえるように話かけた。
「怪しいですが周囲に人の気配は感じませんし、この闇夜と遮蔽物では私達を弓の的にするのも難しいでしょう。何かあれば正宗様がお守りくださいますでしょう」
「当然だ。張譲のいいようにはさせない」
私は周囲に気を配り、張譲が入っていった屋敷の入り口を警戒しました。
短い時間でしたが凄く長く感じました。
「劉将軍と其の同行者は中にお入りください。陛下がお待ちでございます」
張譲は入り口から出てくると、入り口の左に控え私が屋敷の中に入るように促しました。
私は返事することなく揚羽に目配せして彼女を後ろに従え中に入って行きました。
屋敷の中には蝋燭が点され、薄暗い奥の方に皇帝陛下らしき人物が椅子に腰を掛けていました。
「皇帝陛下、お呼び聞き劉ヨウまかりこしました。後ろに控えるは私の側近である司馬懿にございます」
私と揚羽は片膝をつき、皇帝陛下に頭を下げました。
「劉ヨウ、ご苦労であった。手間を掛けさせたな」
「皇帝陛下、お気遣いなく。臣下の努めにございます」
「劉ヨウ、司馬懿、もそっと近う寄れ」
「はっ! 失礼いたします」
私と揚羽は同時に返事をして皇帝陛下に近づきました。
「もそっとじゃ」
「はっ!」
私と揚羽は更に皇帝陛下に近づきました。
「協、入って参れ。其方に紹介したい者がいる」
皇帝陛下は先ほど『協』と確かに呼びました。
私は体が硬直するのがわかりました。
「はい、陛下」
私の右方向にある部屋から女の声が聞こえたかと思うと、その部屋の戸をあけ人が出て来る気配を感じました。
人の気配は皇帝陛下の元に進んで立ち止まりました。
私と揚羽には多分脚しか見えないと思いますが、豪奢な衣装なので脚は見えず絹の布しか見えませんでした。
「両名、表を上げよ」
私は皇帝陛下の許しを得て顔を上げ、揚羽も私に倣って顔を上げました。
「劉ヨウ、我が娘『協』じゃ」
「協皇子、私は車騎将軍・劉ヨウにございます。お見知り置きください」
「協である。
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