暁 〜小説投稿サイト〜
ラ=ボエーム
第二幕その一
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ないけれど。これはどうにかならないかな」
「それじゃあお安くしときますよ」
「どの位だい?」
 そこを問うと返答はこうだった。
「半分でどうでしょうか」
「半分か」
「ついでにそこにあるパイプもつけて」
「気前がいいね」
「そのパイプもいい加減かなり古いですからね。よかったらどうぞ」
「そっちのパイプはそれ程悪くはなさそうだけれど」
「まあよかったらどうぞ。そっちのパイプと合わせて元の額で」
「よし」
 交渉成立であった。ショナールはコインを一枚渡した。
 コルリーネは色々と本を買っていた。その中の一冊にやけに注目していた。
「よくこんなものがあったね」
「掘り出しものですよ」
 いささか胡散臭そうな親父がこれまた怪しい笑みを浮かべて言う。
「他には滅多にないかと」
「というよりはじめて見たよ」
 その声はややうわずっていた。
「こんな本。よくあったね」
「ですから掘り出しものなのですよ」
 入手ルートすらはっきりしないようだ。
「おわかりでしょうか」
「そんなものかな」
 あまりいいとは言えない口車であったがコルリーネは世事に疎いのかそれに乗っているようであった。
「はい、ここでしか手に入らないでしょうね」
「ふん」
「今ならお安くしときますよ」
「わかった、それじゃあ買おう」
「毎度あり」
 そしてまんまと買わされてしまった。だが買ったコルリーネは上機嫌であった。
 ロドルフォはこの時ミミと一緒だった。そして帽子屋の前で二人でいた。
「どれでも好きなの買っていいよ」
 彼は優しい声でミミにそう語っていた。
「どれでもいいの?」
「うん、君だったら何でも似合うけれど」
「嫌だわ、そんな」
 その言葉には恥ずかしそうにする。
「お世辞だなんて」
「お世辞なんかじゃないよ」
 ロドルフォはのろけて言った。
「本当のことさ」
「もう」
 二人は完全に恋人同士になっていた。そして帽子屋の前で仲睦まじく話に興じていた。
 残るマルチェッロは店と店の間をウロウロとしていた。そして品物と通り行く女の子達を物色していた。
「トゥループラムは如何」
「僕のトゥループラムは何処かな」
 そう言いながら女の子達を見ている。
「別嬪さん達にお花を」
「若しくは花を」
 そう言いながら見回していた。そこにコルリーネがやって来る。
「おうマルチェッロ」
「何だ、君か」
 コルリーネの方を振り向いて残念そうな顔をする。
「何だはないだろ」
「男に声をかけられてもな」
「男にもてるだけましと思うんだね」
「生憎僕にはそんな趣味はなくてね。それにしても機嫌がいいね」
「ああ、掘り出し物の本を見つけてね」
「掘り出し物!?」
「そうさ」
 彼はにこやかに返した。
「物
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ