序曲
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若い頃からのお知り合いですか」
「知り合いも何も」
音楽家が答えてくれた。
「一緒に住んでたんだよ、屋根裏に」
「そうだったんですか」
「寒い冬にもね。危うくベッドで凍死しそうになったり」
「うわ」
哲学者の言葉は真に迫っていた。とにかくパリの冬は寒い。
「色々あったよ、本当にね」
「恋もあったしね」
「恋」
画家のその言葉に耳をピンとさせた。
「どんな恋ですか?」
「それはね」
詩人の顔が曇ってしまった。
「あっ、お話したくないことですか?」
「いや、君も芸術家になりたいんだね」
「はい、僕は小説家ですけれど」
私はそう答えた。小説だけでなく詩もやっているがそれは言わなかった。
「それなら知っておきたいことだから。話させてもらうよ」
「有り難うございます」
「あれはね」
そして詩人は話しはじめた。他の三人も姿勢を正し黙ってその話に耳を傾けはじめた。それを見てどうやらかなり真面目な話だと思った。
「僕達がまだ。大学を出たばかりの頃だった」
暖かい暖炉の中で木が燃えていた。ガラスの窓の外では雪が降りはじめていた。そうした寒い季節の話だった。悲しいが暖かい話がはじまった。
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