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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第一話「彼の者は姿を見せず」
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 俺の全身は凶器となる。





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 レン・アッシュベルがいないのなら、この大会に出場する意味はない。元々、出場した理由はレン・アッシュベルと拳を交えるためだった。最強と謳われた奴の力と最強を目指す俺の力、どちらが上なのかを試すのが本来の目的。レン・アッシュベル以外にめぼしい相手はいなかったため、決勝戦では早々に負けることにした。


 騎士道に反するだとか、対戦相手に申し訳なくないのかと思う人もいるだろうが、俺は騎士じゃないし、そもそも精霊使いじゃないのに優勝するわけにもいかないだろう。なら、始めから出場するなという話になるが、それは言わぬが華というものだ。


 優勝者はどこぞの……なんだっけ? よく覚えていないが、冷たい印象を受けたのだけは覚えている。


 さて、目当ての人がいないなら、ここにいても仕方がない。早々に旅立つことにしよう。


 俺が求めるは『最強』。俺の師、夕凪巽が掲げる目標を胸に、いつかあの人と同じ高みに上ってみせる。そのため、俺は世界を回り多くの強者と出会い研鑽を積もう。


 だが、その前に婆さんに挨拶しないとな。《精霊剣舞祭》に出場できたのもあの人のおかげだし。受けた恩は必ず返せ、これも師の教えの一つだ。


 元素精霊界から戻ってきた俺は人気のないところまで行き、認識阻害結界を解く。これで俺はフローレン・アズベルトからマハト・ア・クーへと成った。


「さて、婆さんの気配は、と……いたいた。〈空間転移〉」


 探索系魔術で目当ての人物の気配を探り、転移魔術でその人の元へ向かう。足元に展開した転移魔方陣が一瞬輝き、瞬きもしない間に目の前の景色はガラリと変わった。


 今いる場所はどこかの建物。床には高級そうな絨毯が敷かれ、壁には絵画が立て掛けられている。そして目の前には分厚い両扉が。


 扉の向こうにいる気配が一つなのを確認すると、躊躇なく開け放った。


「入るぞ、婆さん」


 扉の先には重厚な机があり、一人の女性が羽ペンを動かしていた。俺の声に顔を上げたその女性は不機嫌そうに灰色の目を細めた。


「君か。相変わらず騒々しい奴だな」


 俺が婆さんと呼ぶその女性は妙齢の美女という言葉が似合う。黄昏の魔女の異名を持つこの女性はグレイワース・シュルマイズ。俺を《精霊剣舞祭》に出場させてくれた人だ。嘗て帝国の十二騎士に名を連ねていた歴戦の精霊騎士らしい。その発言力は未だ衰えていない。


「報告は来ているだろうが、一応知らせに来た。《精霊剣舞祭》は決勝止まりだ。すまんな」


「構わんさ。君の目的
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