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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第一話「彼の者は姿を見せず」
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がいないのでこうして偽名を名乗り、認識阻害結界で外見を女にして出場している。偽精霊使いとして。


 精霊使いしか出場できない《精霊剣舞祭》だが、そこは裏技を使って誤魔化している。魔術で精霊魔術らしきものを装い、体術だけを使用する。精霊魔装は使っていない、もとい使えないのだが、精霊魔術らしきものを使っている時点で誰もが俺を精霊使いとして認識するだろう。精霊魔装を使わないのも意図的なものとして捉えられている。


 精霊魔装というのは精霊の存在の一部をそのまま顕現する純化形態。それがより高度に最適化されたものを指す。多くが何らかの武器だ。何故だかは知らん。


 精霊を呼び出すのはこの純化形態というものと、質量がなく不定形の神威の塊として顕現する原形態とがある。こちらは単に精霊の力だけを呼び出すもので、精霊魔術の貯蔵量として使われるのが一般的だ。


 原形態も純化形態も取らず、精霊魔術もどきと体術だけで戦っていたら、いつの間にか優勝候補の一角になっていた。それも飛び入り参加で出場したため、精霊共々正体不明の精霊使いとして名声が集まっている。


「この……っ、どこまでも人をコケにした奴だ。その性根、叩き潰してやる!」


 どうやら奴さんは痺れを切らした様子。どう見ても激昂していると分かる表情で精霊魔装と思わしき西洋剣を片手に突貫してきた。ちなみに今は準々決勝だ。


 駆け出しの速度はまあまあだが、それでも俺からすればまだ遅い。これまでと同じように一寸の見切りで回避して無駄のない動作で背後に回る。そして、今回初めての攻勢に入る。


「――螺旋抜き手」


 魔力――こちらで言うところの神威を込めた右手で抜き手を放つ。大層な名前がついているが、ただの捻りを加えた抜き手だ。とはいえ鉄くらいなら余裕で貫通するが。


 ほどほどに弱めた抜き手を対戦相手であるアンジェラ・ロートスの背中に放つ。神威を込めた一撃は少女の身体を傷つけることなく、相手の精神を削り取った。


「グ……ッ!?」


 これは俺が四年前、十歳の頃に気が付いたことだが、どのような原理かは知らないが神威を込めた一撃はたとえ徒手空拳であっても精霊魔装と同じ効果をもたらすらしい。元素精霊界において精霊魔装での攻撃は肉体的ダメージではなく精神的なダメージに換算される。


 魔術を扱う上で魔力コントロールは必須事項。魔力の扱いは俺の得意分野の一つでもあり、図らずとも俺の一撃は精霊魔装を用いた攻撃と同等の効果を生み出すようだ。これは偶然迷い込んだ元素精霊界で喧嘩を売ってきた精霊を相手に実証した。


 ここは元素精霊界。俺の一撃は精霊魔装の一撃に匹敵する。故に――、


「勝者、フローレン・アズベルト!」


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