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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第一話「彼の者は姿を見せず」
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変わらない愛を注いでくれた両親だ。俺も子としてそんな両親が好きだし愛してもいる。


 十歳になった頃には身体もある程度鍛え上げ、武術も以前と同じレベルで修めることができた。爺さんがくれた魔術書も三分の一ほど解読が終わり、攻撃系、防御系、回復系、空間系、探索系、精神操作系と中級魔術までなら覚えることが出来た。上級はかなり難しく思ったように捗らない。原作開始が確かカミトが十七歳の時だからあと四年ある。それまでには覚えようと思う。


 それと俺の契約精霊だが、まだいない。マハト家は由緒ある家柄ではないから、エルステイン家のスカーレットやローレンフロスト家のフェンリルように代々契約精霊がいるわけでもない。まあ、そのうち巡り会うだろう。急いても仕方がないしな。


「くっ、このっ、ちょこまかと……ッ!」


 ギャアギャア喚く対戦相手を右から左へと受け流し、この世界に来て一番の誤算だった『事実』に思考を割く。その事実とはすなわち主人公、カゼハヤ・カミトのことだ。


 俺は今、とある大会に出場しているのだが、ないのだ。


 我らが主人公――レン・アッシュベルの姿が。


 そう、今俺は《精霊剣舞祭》に出場している。この大会は主人公のカゼハヤ・カミトが契約精霊であるレスティアを携え、レン・アッシュベルとして出場するはずだった。女装をして。


《精霊剣舞祭》とは年に一度、元素精霊界で開催される最大規模の神楽の儀式だ。大陸中の精霊使いが集い五大精霊王に剣舞を捧げる、いわば精霊使い同士の武闘会。優勝チームを擁する国には数年間に渡り精霊王の加護が与えられ、国土の繁栄が約束される。そして、優勝者には願いを一つだけ叶えることが出来る。


 精霊使いというのは別次元に存在すると言われる元素精霊界、そこに住まう精霊と契約を交わした姫巫女を指す。


 精霊使いは自身が契約を結んだ精霊の力を自在に振るうことが出来る。精霊には属性というものが存在し、それによって使用できる力は千差万別。


 そんな精霊使いたちの戦いをレン・アッシュベルは見事勝ち抜き、精霊剣舞祭で優勝を果たした。


 果たした、はずなのだが……。


「貴様……っ、フローレン・アズベルト! いい加減、勝負しろっ」


 いないんだよなー、レン・アッユベルが。どこにも。原作道理ならこの《精霊剣舞祭》に出場して優勝するはずなのだが、レン・アッシュベルのレの字も見当たらない。やはり出場していないのか?


 ちなみに俺はフローレン・アズベルトという名で出場している。精霊使いは基本的に女しかいない。例外は過去に混乱と破壊をもたらし魔王と呼ばれた男と、主人公のカゼハヤ・カミトの二人だけ。転生特典として精霊契約を行える俺だが、まだ精霊
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