暁 〜小説投稿サイト〜
異世界では詐欺師が勇者をやっていますなんてよくある咄(はなし)だよねぇ?
始まりのお伽噺
第一章
第一話 詐欺師は勇者としてよびだされたようです。
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まないが、この世界のために力を貸してくれぬか」

 背後から声をかけられる。さっきもボクに声をかけていた女性の声だ。
 そういえば、まだ顔を見ていなかったな。いったいどんな女性なんだろうか?
 できるだけエロイ人がいいな。とか、そんなことは結構どうでもいい。
 
 問題はその女性がボクにかけた言葉だ。
『世界のために力を貸してくれ』
 いや、どういう意味?
 
 ボクの中では既に答えは出ているが、今まで生きてきた所謂常識というものがその可能性を否定する。
 しかし、戸惑っている心と対照的に体はスムーズに動く。
 振り返り、前を見つめる。
 そこには、燃え盛る炎のような真紅を基調とし所々黒と暗い紫色のラインが入ったドレス着て、色とりどりの指輪やイアリングやネックレスやティアラを身に着け、まるで大胆不敵という言葉はこの人のために生まれてきた言葉じゃないかと疑ってしまうくらいに、其れこそ玉座に相応しい堂々とした出で立ちで、シニカルな笑みを浮かべながらボクを見つめる――一人の女性がいた。
 その容姿は、絶世の美女そのもの。手入れのいきとおっているであろうその艶やかな赤髪はドレスによく似合っていて、赤髪と同じ色をしたその瞳は見つめるものを焼き尽くさんとばかりにぎらぎらと強い輝きを放つ。スタイルはよく引き締まったそれでいて出るところは出ている、見るものを引き付ける妖美な雰囲気を出している。
 見たところ僕よりも年下の二十歳になっていない年齢なはずなのに、美少女とはとても口が裂けても言えない。精神年齢が高いとか、大人びた格好をしているとか、背が高いとか。そんな理由がなくとも美女と言わざる負えない容姿だった。
 
 彼女の姿に完全に目を奪われながら、しかしポーカーフェイスを気取ってどうにか表面に出さないように気を付けて、次の行動を待つ。
 注意深く観察をしながら。――ああ、もちろん周りの人たちの観察だけどね。

「異界の者よ、この世界を救うために我々の国の勇者となってくれ」

「無理です」

 即決した。
 ヤバい。
 完璧に狂ってる。
 いやいや、何言ってんだこいつ。

 詐欺師のボクに勇者を頼むとか、どういうことだい?

 この日から、ボクはあろうことか世界のため誰かのために生きていくことになる。

 それにしたって、突拍子もなさすぎるだろ、これ。

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