第二話 トラップ&トレイン
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ちぼち行こうか。アスナは後ろからついてきなよ」
「は、はい……分かりました」
ここは経験者に従うべきと考えて、アスナは素直に頷いた。
ジルがこの古城を突破できた理由――それは攻略組では珍しく罠解除スキルをマスターしているためである。
攻略組プレイヤーはスキルスロットのほとんどを戦闘スキルで埋めてしまっている。ゆえに罠解除や料理といったスキルを持っている者は少ない。
しかしかといってこの上層のダンジョンにボリュームゾーンのプレイヤーを連れてくることは危険な賭けになる。パーティーメンバーを多くして護衛しようにもクエストの最大三人という人数制限のせいで不可能だ。
ここまで戦闘は一度も行っていないが、確かな実力がジルにはある。
罠を解除しながら進んでいくジルの後ろ姿を見た。赤いコートの裾がマントのように揺れ、血盟騎士団団長の姿を連想させる。
そのとき、ジルが立ち止まった。
「あれ? プレイヤーじゃ……ん?」
「どうかしましたか?」
アスナは首を傾げているが、ジルは珍しく真剣な表情で正面を見据えていた。
しかしすぐにいつもの軽薄な笑みを浮かべた。その笑いは微妙に引きつっているようにも見える。
「あらら、こりゃ面倒な……」
ジルが呟いたとき、アスナは床がかすかに揺れていることに気づいた。それが少しずつ大きくなってきて、さらには地鳴りと誰かの悲鳴まで聞こえてきた。
「――ぁぁ――ぁぁあ――」
段々と近づいてくる悲鳴。その声にアスナは聞き覚えがあるような気がした。
「――ぁあ、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁーー!」
緩いカーブの先に、それはようやく見えた。剣や槍などで武装したスケルトン兵の大集団。その前を必死の形相で走る黒一色の服装の片手剣士が――。
「――って、キリトくん!?」
「アスナァァァ! それにジルゥゥゥ!」
「『黒の剣士』、お前かよ! ――って、こっち来んなッ!」
キリトと知り合いだったようで、ジルは非難の声を上げた。
「すまん! 助けてくれ!」
「誰が助けるか、バーカ! ……って、言いたいとこだけど」
今さら逃げられないか、とジルが肩をすくめる。
「そんなわけでアスナ。君も手ぇ貸してくんない?」
「あ、はい。了解です」
アスナは頷いて、腰からレイピアを抜く。ジルも腰のカタナの柄を握った。
こちらが戦闘体勢になったことに気づき、キリトがブーツのスパイクを利かせながら振り返った。それと同時に、アスナは駆け出す。
スケルトン系のモンスターとアスナのレイピアは相性が悪い。それにも関わらず、彼女のレイピアは的確にスケルトン兵を捉える。
スケルトン兵のヒットポイントを半減させたところで、赤い暴風が吹いた。
「――はい、二体撃破っと」
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