第一幕その七
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い程の田舎です」
「ふうむ、それは大変でしたな」
「まあよくあることですよ。私はその熊を何とか倒しましたが」
「いやはや、それはそれは。ところで」
「はい」
彼はヴェルトナーの問いに顔を向けた。
「貴方は私の旧友であったあのマンドリーカ大尉の甥と今仰いましたが」
「はい」
彼はそれを認めた。
「それが何か」
「いえ、私は彼に手紙を送りましたので。彼はどうしたのですか?」
「叔父ですか」
「はい」
「亡くなりました」
彼は俯いてそれに答えた。
「そうだったのですか」
それは考えなかった。ヴェルトナーは友の死を聞き唇を噛んだ。
「いい男でした。友人としても軍人としても」
「有り難うございます。叔父も天国で喜んでいることでしょう」
彼はそれを受けて言った。
「そして今では私がマンドリーカ家のたった一人の者です。叔父は私に自分の全てを残してくれました」
「そうですか」
「それで手紙を開いたことはお許し下さい」
「はい」
「それでお聞きしたいのですが」
彼はまた従者に目配せした。
「あの写真を」
「はい」
従者はそれを受けて一枚の写真を取り出した。それはヴェルトナーが手紙に添えたあの写真であった。
「この写真は貴方の娘さんで間違いありませんか?」
「はい。私の娘に間違いありませんが」
彼はそれに答えた。
「アラベラと申します。手紙にも書いてありましたが」
「そうですか」
マンドリーカはそれを聞いて頷いた。
「この手紙によるとお一人だそうですが」
「はお」
ヴェルトナーはそれを認めた。
「婚約もしておりませんが」
「お手紙の通りですね」
彼はそれを聞きまた頷いた。
「それでは少しお話したいことがあるのですが」
「そうですか。それなら立ち話も何ですから」
ヴェルトナーはそれを受けて後ろにいた妻に目配せをした。
「少し席を外してくれ」
「はい」
彼女はそれに従いその場から立ち去った。
「御前も少し休んでいてくれ」
マンドリーカも後ろにいる従者にそう伝えた。彼はそれに頷き下がった。
二人はテーブルについた。そして話をはじめた。
「でははじめますか」
「はい」
マンドリーカはそれに了承した。そして話がはじまった。
「あの手紙の内容についてですが」
話は手紙のことであった。これはヴェルトナーもおおよそ見当がついていた。
「はい」
気構えはできていた。それを受けて顔を向けた。
「娘さんの婚約者を探しておられるようですが」
「はい」
その通りであった。彼はそれを認めた。
「ですがそれは私の叔父に対してだったのですか?御言葉ですが叔父は」
「それはわかっていました。彼が人生の黄昏時にいることは」
彼はそれに対して答えた。
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