7-2話
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「ぅ…あ……」
顔にぬめりを感じながらオレは気が付いた。
気持ち悪い…。
何か頬に粘着質な液体が張り付いていて、感触の悪さと共に意識が戻った。
何よりも顔を洗いたい衝動に駆られての目覚め。
体が重い…。
足元から重力の重さがのしかかっていた。
足首から引っ張られている感覚は違和感を覚えた。
後頭部に鈍痛がする……。
眠気が覚めるような不快な痛覚を刺激された。
頭蓋骨が割れるようなその痛みに、頭を抱えたくなった。
だがそれが出来ない。
手が、動かなかった。 両腕が後ろに回され、両方の手首が拘束されていた。
ギチギチと、紐状のソレは血の流れが止まって鬱血でもしてしまいそうなほどにキツく、何重にもグルグル巻きされている。
人は好まない環境になると不快さを露にする。 当然オレも腕が動けない状態に不機嫌に疑問を浮かべる。
「な…ぁ……なんで、縛られて…ぇ、っ―――!!?」
だが意識がハッキリすると、オレの視界はありえない光景を写していた。
足元より下は地面ではなく、遥か遠くに緑が広がっていた。
一瞬で理解するその立ち位置。 オレは森の上の、それもかなり高い所の崖にいて、その足は地面に付いていない。
それがオレの疑問を置き去りにする衝動を与える。
「ぁっ…なっ、高っ!? お、落ちっ……!?」
とんでもなく怖い。
どんな生物でも高所での地に足が付かなければ動揺する。
オレも当然、足をバタつかせて暴れ出した。
「な、なんだよこれっ!? だ、誰か……ヒッ!」
暴れた拍子にわかった。
オレのツタのようなモノで体は吊るされていて、それが上で木の枝を支点にブラ下がっている状態にある。
ギシギシと揺れる枝が危機感を煽った。 軋む音がオレの命の危うさを表現しているようで…恐怖した。
「あまり動くと…ツタが切れちゃうよ、仙石」
視界の外で誰かが声をかけてきた。
オレは顔を上げて、その声の方を見た。
すると目の前に、仮面があった。
「―――……っ!」
白地に穴だらけの仮面の向こうにある眼球がオレを覗いていた。
仮面を着けた……少年と思わしき男。 それは吊るされたオレに至近距離で見詰めていた。
その無言でオレを睨みつける瞳は暗い。 仮面の向こうからという以上に、そいつの瞳は黒く濁っていて獣相手とは違った不快さを感じさせた。
「お、お前……な、何なんだ!? ふ、ふざけてんのかよ!?」
「……」
オレはそう怒鳴りつける。
ブレる事なく視線を固定して凝視してくるソイツに向かって睨み返すが、何も言い返してこなかった。
奇妙な奴だ。 奴が顔に着けているモノだってそうだ、
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