第十話 騎士姫の受難
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私は辛うじてその攻撃を受けるが、勢いを殺しきれず吹き飛ばされてしまう。
そしてそのままエリア内の木に叩きつけられた。
「ゴホッゴホッ……!」
思わず大きく咳込む。だが黒き狼は攻撃の手を緩めない。
「ヴォルゥゥゥゥゥゥゥアァァァァァァァァ!!!!!」
「グ…グゥゥゥゥ!」
私は爪で切り裂かれ、前脚で殴られ、ふき飛ばされる。
切り裂かれた場所からは血のようなエフェクトが出て、着ていた“Kob”の制服もボロボロになっている。
私の体はもう限界だ。勝機がないのは明らか。
だからと言って私に諦めるつもりなど毛頭ない。
私はよろよろ起き上がると“カオスヴォルフ”にレイピアの切っ先を向けた。
黒き狼は私が起き上がるのを待っていたかのように飛びかかってきた。
そしてまたその鋭い爪で切りつけてきた。
私はそれを最小限の力で受け流す。
だが狼の武器は爪だけではない。
爪が受け流され私が反撃しようとした瞬間…
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
黒き狼はその鋭い牙で私に噛みついてきた。
私は咄嗟にレイピアを前に突き出す。
「ひぐ……く…ぎ……!」
ガキン!!!
甲高い音が響いた。
バリボリガリゴリボリガリバリボリボリボリボリボリ……
私の突き出したレイピアは狼の口の中に吸い込まれる。
だがその瞬間、黒き狼はその牙で私のレイピアをかみ砕いた………。
「あ……あぁぁぁぁぁぁ……」
この瞬間、私の中で何かが壊れた。
敵わない…。
この獣に私は殺される。
私はその場にへたり込んでしまう。
黒き獣は私のレイピアを噛み砕くと、勝利を確信したのか、私にゆっくりと近づいてくる。
私が、私でいるため。
最初の街の宿屋に閉じこもって腐っていくくらいなら、最後の瞬間まで自分のままでいたい。
たとえ怪物に負けて死んでも、このゲーム、この世界にだけは負けたくない・・・。
そう思って私はここまで戦ってきた。
自分が自分であるために、この世界にだけは負けたくないと思って。
だがそれもここまでのようだ。
私はこの獣に殺される。
そして現実からも永久にログアウトする。
私はその場に倒れ込んだ。
全てを時の流れに任せるように。
きっとあの獣はあの鋭い牙で私を噛み殺すであろう。
私はこの世界で起こった事を走馬灯のように思い出していた。
始まりの街で茅場晶彦からデスゲーム宣言を受けた時のこと。
第一層攻略戦で一人のプレイヤーと共に協力してボスを倒したこと。
ヒースクリフに声をかけられ“血盟騎士団”に入団したこと。
功績が認められて副団長に昇進したこと。
そして攻略会議でいつも意見がぶつかる第一層攻略の時、共
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