第十話 騎士姫の受難
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明らかに獰猛そうな鋭い牙が覗いていた。
それでもモンスターとしてはあまり強い方ではなく、むしろ経験値稼ぎに使われるようなモンスターである。
なので、私も次々と湧いてくる“サーベルヴォルフ”を倒し闘い続けた。
全てはゲームクリアのために。
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クエスト開始から一時間。
私は違和感を感じ始めていた。
今回のクエストはこの“サーベルヴォルフ”を五十体倒せばクリアというものなのだが、私は既に少なく見積もっても百体は倒していると思う。
なのに“サーベルヴォルフ”の数はいっこうに減らず、むしろ増えてるように見える。
私もそろそろ疲労がたまり始めていた。
実際の体は現実世界にあり、もちろん疲れるはずは無いのだが脳は働き続けているので疲労も感じる。
「なんでこんなに出てくるのよ…」
私もさすがに弱音を吐いてしまう。ここまで数が多いとは想定外だ。
私はここまで苦戦することは予想しておらず、転移結晶は用意していない。
なので、このクエストを攻略するしか私には道がない。
二百体は倒したであろうか。
出てくる“サーベルヴォルフ”も徐々に減ってきた。
持ってきていた回復ポーションも底をつき、私はすでに二時間は戦い続けていた。
体力的、精神的にもそろそろ限界だ。
すると、モンスターのポップが止まり、私の周りを囲んでいたオオカミたちも脱兎の如くその場を去って行った。
「え…、どういうこ……!!」
私は何が起こったか分からずしばし呆然としていたが、その意味がすぐに分かった。
圧倒的威圧感を放つ何かが私の前に躍り出た。真っ黒な“サーベルヴォルフ”。
だが大きさは通常よりも四倍近くある。
そしてHPバーは四本ありその隣には“カオスヴォルフ”と表記されていた。
「クエストボス……」
私は震える声でそう呟いた。
このクエストはボスが出てくるほど難しいクエストとは聞いていなかった。
このクエストをクリアしたプレイヤーは皆、昼間に何人かのパーティを組んでこのクエストに挑んでいた。
このクエストを夜間に行ったというプレイヤーは聞いていない。
つまり、このクエストは昼と夜で難易度が大幅に変わってくるということだ。
私は茫然と見上げていると“カオスヴォルフ”は悠然と私を見下げている。
そして、
「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」
お腹の底に響くような遠吠えを発した。
そして“カオスヴォルフ”は僅かに屈むと目にも止まらぬ速さで私に突進してきた。
「グォラァァァァァァァァァ!!!」
「く…あ…!」
“カオスヴォルフ”は私にその鋭い爪で襲いかかってきた
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