第一幕その五
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へ最後の別れをする時。けれど私は私です」
「そう、貴女は貴女御自身に他なりません」
エレメールもそれには同意であった。
「ですがその中でも変わっていかれるのです。花が咲く様に」
「花、ですか」
「はい」
エレメールはそれに頷いた。
「そして私の手の中で咲くのです。大輪の花が。フロイライン」
その言葉は次第に熱を帯びてきた。
「躊躇われることはありません。あの橇に乗りましょう。そして幸福へ向かいに」
「あのロシアの馬が引く橇に」
「はい」
「では行きましょう。謝肉祭を祝いに。ただ」
「ただ?」
エレメールはここで風向きが変わったことに内心危惧を覚えていた。
「ズデンコも一緒に」
「弟さんもですか」
「はい」
真相は伏せた。
「半時間後で弟と一緒に下に向かいますわ」
「フロイライン」
エレメールはそれを聞いて悲しい顔にならざるを得なかった。
「貴女は残酷な方だ。ここまで来て尚も騎士を側に置くとは」
「言わないで下さい」
アラベラは目を伏せ、顔を逸らして答えた。
「私には弟が側に必要なのです。それをおわかり下さい」
「・・・・・・わかりました」
エレメールは無念さを心の中に押し殺して言った。
「ではお待ちしております」
「はい」
アラベラの声は普段とは変わらない。だがエレメールにはこの上なく冷たい言葉に聞こえた。
エレメールは頭を垂れた。そして哀しそうな顔でアラベラに対して言った。
「フロイライン」
その声も同じであった。
「貴女は素晴らしい女性です。崇拝に足る方です」
アラベラはそれには答えない。ただ目を伏せている。
「ですがあまりにも残酷な方だ。だがその残酷さにすらこの上ない魅力がある」
そして最後に言った。
「だからこそ私は貴女に想いを寄せる。それはおわかり下さい」
その言葉を最後に部屋を後にした。すると席を外していたズデンカが部屋に入って来た。
「伯爵は帰られたのね」
「ええ」
アラベラはそれに応えた。
「下で待っておられるわ。半時間したら下に行かないと」
「そうなの」
「ズデンカ、貴女も一緒よ」
「私も!?」
「そうよ。すぐに用意して。言ったでしょ、小さい時に」
アラベラは妹に対して微笑んで言った。
「私達は何時でも一緒だって。そして私は何時でも貴女の味方だって」
「うん」
ズデンカはそれに頷いた。その言葉は忘れたことはなかった。幼い頃姉にふと言われた言葉だったが。
それでも二人はその言葉を今でも覚えていた。そしてその言葉通り二人は何時でも一緒だったのだ。
「だから・・・・・・ね。一緒に行きましょう。それに今夜は私の娘時代へのお別れの日」
「謝肉祭の最後の夜」
「そうよ。その時には相応しいでしょう?そして貴女も
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