第十話
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手刀で昏倒させたウェールズを抱え、会場へと向かう。
誰もが明日へ向けて後悔のないように精一杯楽しんでいる。
そんな哀しい喧噪に、一発の爆音を拡げた。
音源である私に誰もが視線を向ける。
ウェールズのただならぬ状況に、杖を抜こうとする者もいる。
「聞きなさい!」
会場全体に響かせるように、大声でそう叫ぶ。
一瞬狼藉するも、誰もが静かに私の言葉に耳を傾ける姿勢を見せる。
「貴方達に二択の問いを与えるわ。貴方達はウェールズに生きて欲しい?それとも共に戦場でその命燃やし尽くして欲しい?」
ざわざわとした空気が辺りを包む。
「前者ならば、私の命に代えても彼のアルビオンから脱出させると約束するわ。後者なら今この場で起こったことを忘れ、予定通りの最期を迎えればいいわ」
隣り合う仲間達と話し合いを初める。
答えを静かに待っていると、サイトが私に話しかける。
「ルイズ、これは一体―――」
「なんてことないわ。ただ、確かめたいだけ。虚勢の中に秘められた本音をね」
絶望を振り切るための儀式だって事は承知している。
だけど、それは決して本心を嘘で塗り固めることではない。
今、彼らの言葉を憚る者はいない。
ただひとり、この問いに意義を申し立てるであろう存在は夢の中。
故に、口に出せない本音も次第に漏れていくのは必然。
「―――俺は、ウェールズ様に生きて欲しい。この方はこんなところで死んでいい器じゃない!」
一人の貴族の本心を皮切りに、そうだ!という声が波紋となり拡がっていく。
一人の勇気が、皆の本心をさらけ出す。
真っ先に本音を口に出した彼は、間違いなく英雄と呼べるだろう。
だって、彼のお陰でウェールズは助かるのだから。
「その言葉が聞きたかった」
自分でも珍しいぐらいの笑顔でそう答える。
会場は、先程までとは違った活気に満ちあふれていた。
ただの悪足掻きの為の戦いではなく、未来を紡ぐ一端となる戦いに赴くのだ。
意味も価値もまるで違う。
彼らが一秒でも長く、一人でも多くレコン・キスタの奴らを倒すことで、敬愛すべき主が助かるのだ。気合いの入りようは比較にならない。
興奮冷めやらぬ中、私はタバサの下へと向かう。
すると、都合良くキュルケも傍にいた。
「タバサ。悪いけど今すぐウェールズを連れてトリステインに送って頂戴。スリープ・クラウドで彼が起きないようにしてくれると尚いいわ」
「わかった」
「って、ルイズ。貴方ウェールズ皇太子をトリステインに亡命させるつもり?」
「そうよ」
「そんなことをすれば、外交問題に発展するわよ。お世辞にも国力に優れている訳ではないトリステインが戦渦に巻き込まれるのは、不都合極まりないんじゃない?」
「ああ、そんな
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