序章 始まりと終わり
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受け答えもできないわよ、アイツ。動かせるわけないって」
「聞いてたって。ただ……俺だって混乱してるんだっての」
吐き捨てるように言う。
実際、この状況下で混乱していないヤツはほんの一握りだ。表面上はどうにか冷静を装って見せても、俺にはまだ実感がないのだ。
本当に俺たちは、この世界で死んだら現実でも死ぬのか?
「理解しろって言っても……無理に決まってんだろ、そんなの」
「……でしょうね。だけど、こうしてゲームからログアウトできないのも事実よ。――ジル、あんたも現実を見なさい」
「それは……分かってる。だからキースを動かせるか聞いたんだよ」
俺は頭を振ると、先ほどから考えていたことを告げる。
「俺としては、今すぐこの街を出たほうがいいと思う。ここはプレイヤーが多すぎるんだ」
レベル制のSAOではレベルが上がるだけで格段に死ににくくなる。そのうちにほかのプレイヤーたちも頭が冷えて、自身を強化するためにフィールドに出てモンスターを狩り始めるだろう。そうなると、街の周辺はあっという間に干上がってしまう。
そうなる前に、できるだけ先へ進まなければならない。
「最悪、キースを残してでも移動するよ」
「……本気なの?」
「本気。だってそうしないと俺が死んじゃうじゃん?」
すると、リサが胸ぐらを掴み上げてきた。
「あんた、自分が言ってること分かってる? 友達放って自分だけ生き残ろうって言うの!?」
「仕方がないじゃんか!」
思わず、俺はリサの両手首を掴み返して叫んだ。
「俺は自分が生き残れるかだけで精一杯なの! 仲間殺したヤツのことなんて考えられるかッ!」
叫んだあとに、俺は酷い自己嫌悪に陥った。
このゲームがデスゲームだと発覚する直前、キースはモンスターにやられそうになった仲間の一人を面白半分で無視して見殺しにした。
その場にいてキースを止められなかった俺やリサも同罪だが、その主犯だった彼はもっとも罪が重い。そんな考えが、俺の中にはあったのだ。
リサは目を見開いて、しばらく呆然としていた。
「……いいわ。もう、好きにして」
突き放すように告げ、リサは俺の胸ぐらから手を放した。
自由になった俺は、よろめくようにして後ろに下がった。
「……ごめん」
リサの表情を見て、俺はすぐに顔を逸らした。彼女のあんな酷い顔を見ていられなかったのだ。
「なにかあったら、メッセージ飛ばしてくれよ」
もしかしたら、これで会えるのは最後になるかもしれない。そう思いつつも、口を開いていた。
「……うん。そうする」
「それじゃ……またいつか」
どうにかそれだけ
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