SAO編
episode6 猛る想いの炎
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く。
「…クク。どうした。もう、立ち上がる、気力も、ないか?」
ザザが呟くのが聞こえるが、そんなものは俺の意識にはさざ波すら生じない。
ソラは、あの常人離れしたウィンドウ操作速度で、自分の装備フィギュアからこの手袋をストレージへと移した。三人を相手にしては、たった一つ装備を外すのが限界だったのだろうが、そのたった一つに、この《カタストロフ》を選んだ。
「ならば、奮い立たせて、やろう。これは、あの女の、細剣だ。俺の、好みの、エストックとは感覚が、違うが、…威力、軽さは、申し分ない」
ザザがメニューから取り出したのは、炎のような薄赤い光を纏った細身の剣は、見間違うはずもないソラの愛剣、《フラッシュフレア》。『冒険合奏団』のメンバーで取りに行った素材で作った、俺達の思い出の剣。
ソラが俺に残してくれたのは、その思い出の剣でもなく。
友人の最高傑作なのだと笑っていた金属鎧でもなく。
俺と二人でそろえた、結婚指輪ですらもなく。
俺が戦うための、俺が生きるための、俺のための武器だった。
俺の魂に、ぼっ、と火がつくのを感じた。その火が、俺の涙で現れた視界をはっきりと乾かし、意識に氷の冷静さと炎の激しさを宿す。目の前の、ザザを…その右手でゆらゆらと揺らぐ、思い出の剣を見つめる。その剣の炎が、俺の火種をますます激しく猛らせる。
「…クク。この剣で、お前を、殺すのは、さぞ、」
「その剣を離せ」
声は、もう震えない。はっきりとした声で言い、ゆっくりと立ち上がる。
「ヒャハァッ! この状況で随分威勢がいいなァ、『旋風』!」
「……クク、離せ、だと?」
「……その、剣を、離せ」
俺は、もう一度繰り返す。それを受けて、ザザがしゅうしゅうと耳障りな音を立てて笑う。ダンカンが濁った眼のまま両手の巨大なハンマーを構える。
そして、甲高い声で笑ったジョニーが、ナイフを構えて先陣を切って突進し、
「っ!!?」
その鋭いナイフの横腹を、俺の右手が薙ぎ払った。
単発『体術』スキル、《スライス》。
その一撃。その、たった一撃で、ジョニーの持つナイフが根元から圧し折れた。
「……聞こえたろう。…その剣を、離せと言った」
攻撃を放った右手に装着されているのは、禍々しい文様があしらわれた、銀色の輝き。
片手用グローブ、《カタストロフ》。
その武器破壊ボーナスは、武器が小さくなるにつれて反比例的に大きくなる。
ゼロ距離武器である『体術』を操る俺にとって、この上ない最強の装備。
「てめェ…死ぬ覚悟できてんだろォなァ……」
「…ザザ。もう一度だけ言う。その剣を離せ。それはお前なんかが持っていいもんじゃない」
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