SAO編
episode6 恐怖と絶望の体現者
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闇の中、無言で滑るように近づいてくる漆黒の影。
足こそあるが、その艶消しの黒いポンチョを纏った姿は、このホラー系古城ダンジョンのMobと言っても通じるほどの不気味さ。だが、その影は、Mobではない。こんな禍々しい空気を生み出す存在が、ただのデータの塊であるはずがない。
いや、そんな勘だけではない。
確固たる理由もある。
なぜなら俺は、その影を…その男を知っていたから。
「っ……なぜ、貴様がここに…っ」
アインクラッドでは、知らない者はいない有名人。だがそれは、「最悪のプレイヤー」という恐怖によって、だ。この世界で最も恐れられた集団である、『殺人者』ギルド、『笑う棺桶』…ラフィン・コフィンの首領にして、天才的な短剣捌きで無数の敵を…いや、プレイヤー達を殺していった、最強の殺人鬼。
「PoH…っ!」
「プー」などというユーモラスな響きとは裏腹、アインクラッドおける恐怖を体現するものとさえ謳われる死神。無言のままゆっくりと歩み続けたその死神の足が、ダンジョン内の安全エリアにはいった地点…俺の間合いの一歩外で止まる。
「Ah−Han? 俺がここにいちゃ悪いのか?」
艶やかな…それでいてどこか異質な響きを持つ美声で、PoHは俺の言葉に答えた。
流暢な英語の混じった、独特の声。
まとわりつくその言葉に一瞬体が強張るが、すぐに気を取り直して言い返す。
「…それもそうか。『最前線』でも無けりゃ迷宮区でもない。テメーら犯罪者プレーヤーがいても、おかしくはねえな」
「Hummmm? 思ったより冷静だな。もっと恐怖で震えてくれると思ってたんだがな」
「…は。そんな必要はねえさ」
そうだ。
震える必要はない。
奴が最悪の殺人鬼として恐れられているといっても、それはあくまで中層エリアでの話だ。事実奴らラフコフはいままで最前線には出没せず、ソラ達…すなわち、『攻略組』の面々に牙を剥いたことは無い。レベル的に、襲っても勝てないからだ。例えその首領であるPoHといえど、そのレベルは俺の方が上…厳しく見ても同格のはず。
「…勝てると思っているのか? これでもレベルは『攻略組』と変わらんぜ、俺は」
ならば、恐れることは無い。
確かに俺のピーキーなステータスと戦闘スタイルは相手を選ぶ必要があるが、対人戦は比較的得意な分野に入る。『敏捷』一極で鍛えた速さを生かしての剣戟回避、そしてカウンターで相手を叩く。或いは、そのスピードで相手のソードスキルの発動前に懐に潜りこみ、必殺の一撃を見舞う。
斜に構えた情報屋なんぞをやっている俺はそれなりにいちゃもんつけられる機会も多く、荒事の経験も多いが、それでも俺は他の情報屋は勿論、『攻
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