第一幕その二
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教皇のカードである。それはさかさまになっていた。
「タロットは少し違いまして」
「はい」
彼女はここでカードの説明をした。
「カードが逆になっているとその示す意味も違ってくるのです」
「といいますと」
「これは不幸を示しているのです。もう一人の娘さんの」
「不幸を」
「けれど不思議ですね。こちらの方も最後には幸福になります」
「私のことなのかしら」
ズデンコはそれを聞いて何故か心配していた。
「それとも姉さんの」
「ねえお母さん」
気になったので母に話しかけようとした。だがアデライーデはそれを拒絶した。
「御免なさい、ズデンコ。今は静かにしていて」
「はい」
母にこう言われると仕方がなかった。彼女は下がることにした。
「あの子は?」
「あの実は」
アデライーデが占い師に対して説明をした。
「実はあの子は女の子なのです。このウィーンで二人の女の子を身分に相応しいように育てることは私達にはできませんので」
貧乏貴族の悲しさであった。
「けれどあの娘は悪いことはしませんわ」
「そうですか」
「はい。他の誰よりも姉を愛しておりますもの」
「姉だけだといいのですが」
「それは?」
アデライーデだけでなくヴェルトナーもその言葉に顔を上げた。
「いえ、人の心は複雑なものですから」
占い師はカードを手にすることなく二人に対して語った。
「愛する人は一人とは限らないですよ」
「といいましても」
「あの娘はまだ幼い。とてもそこまでは」
「女の子とは何時の間にか成長するものですが」
占い師はその豊富な人生経験からそう語った。
「ですがそれは関係のない話ですね。置いておきましょう」
「はい」
こうしてこの話は中断された。そして占い師は占いを続けた。
「この波乱は大変なもののようですね。そしてとても嫌なもののようです」
ここで塔のカードを出してきた。
「恐ろしいことが起こるようです」」
「そんな」
「けれど御安心下さい。最後には幸福が訪れるのは間違いないです」
最後のカードを出してきた。それは恋人のカードであった。
「全ては幸せに収まります。神は貴方達に幸福をもたらすでしょう」
「本当でしょうか」
「カードはそれを伝えております」
「あの」
ここでアデライーデが身を乗り出してきた。
「よろしければこれを」
そしてエメラルドのブローチを差し出した。
「これでもっと詳しく占って頂けるでしょうか」
「タロットは続けて同じことについて占いは出来ないのですが」
彼女はそう言って断ろうとした。幾ら何でもそのような高価なものを貰うのは気が引けたからだ。
「ではそれ以外の占いで。おできになるのでしょう?」
「ええ、まあ」
彼女は二人の押しに押されそれに頷いた
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