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ワンピース〜ただ側で〜
第8話『新たな高み』
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を貸さず、一瞬だけ笑――

「おい……勝手に終わらるな」

 ――その表情が固まった。

 驚いたのはエースだけではない。エースの仲間も、ジンベエも。

「俺はまだ……戦える」 

 腹に火拳の直撃を受けただけあって、出血がはなはだしい。しかも火だ、おそらく重度の火傷にもなっているだろう。
 常人ならたっていられないだろうその傷で、だがハントはゆらりとエースをにらみつける。
 その目に、一切のくもりはない。それどころかより一層に強い光をたたえている。言葉を失っていたエースも、それを受けて呆れたように笑った。

「こいよ」
「……」

 身構えて、だがハントは動かない。

「?」

 エースが首をかしげたところで、ぼそりと。

「この一撃だ」
「ん?」
「……お前の生きている火、俺の不完全な水への意識、心臓の鼓動、差す光、吹き抜ける風、乱れる呼吸……尽きない大気」
「大丈夫か?」

 会話が成立しない。困惑の色を見せるエースへ向けて、だがそれを気にも留めないでハントは言う。

「俺は人間で、魚人じゃない。大気があって水がないのが当たり前だ。魚人は水中でもっと強くなる、彼らの魚人空手も水の中に入ればより強い効果を発揮する。けど、俺は違う。陸にいるときと変わらない威力しか発揮できない。俺が人間だからだ。でも、だからこそ違う。感じるのは水じゃない、大気だ。制圧するのは水? 違う。じゃあ大気? ……違う。大気と水だ。だったら俺は陸でこそ強い魚人空手だ」

 ぼそぼそとエースには理解の出来ない言葉を並べ立て、ゆらりと魚人空手を構えた。

「……お前?」

 さすがに不気味になってきたらしく、ちらりとハントの仲間であるジンベエへと視線を向けるが、その彼もじっとハントをみて動かない。

「悪いが容赦はしねぇ……立った以上、それが男の決闘だ」

 エースが拳を固めたとき、ハントがやっと動いた。

「この一撃に全てをこめる。行くぞ、火拳の」

 ハントの言葉を受けて、小さく笑みを浮かべたエースが拳を腰だめに構える。先ほどまでの一撃はすべて手を抜いていたのだろうか、そう思わせるほどの炎がエースの拳から生まれ――

「――火拳!」

 それを全力で放った。

「魚人空手――」

 それに対し、ハントは小さくつぶやいた。これに驚いたのはジンベエだ。

「やめるんじゃ、ハント! 魚人空手そのものでは火には――」

 だが、次に聞こえてきたハントの言葉に、息を呑んだ。

「――陸式」
「り、りくしき?」

 炎がハントへ迫っていた。もう回避は間に合わない。それへ向け、ハントは最後の一撃を繰り出した。

「若葉瓦正拳」

 突きこまれた拳とともにハントの体が炎に
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