第8話『新たな高み』
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なんて御免だとお前さんいつも全力で断るからじゃろうが」
「いや、だって海賊はあまり好きになれないですから」
自分の師匠が海賊であることを棚に上げて、もう鼻くそをほじりそうなぐらいに軽く言うハント。明らかにやる気のない態度だ。といってもハントの場合、実はこれが平常運転。ジンベエが知る限りハントがやる気をだすのは海賊退治と修行の時くらいのものだ。
「……もしかしたらお前さんにも手伝ってもらうかもしれんからな」
「え!?」
驚いて身を起こすハントだが、ジンベエからすればむしろ驚く彼が不思議だ。
「そのためにお前を連れてきとるんじゃろうが」
「いや、そうかもしれないですけど……俺程度で戦えるぐらいの男ならそれこそ火拳と白ひげさんが接触しても問題ないんじゃ?」
「……逆じゃな」
「逆?」
「わし一人では止められんかった時、お前さんにも戦ってもらうかもしれんということじゃ」
「え」
今度のハントの言葉は驚きよりも呆けの色が強い。
「……そんなにやばいんですか?」
「うむ、新聞を読み限りは一度王下七武海の誘いもけっておる」
「……それは、またすごいですね」
自分の師匠であるジンベエも王下七武海だ。つまり火拳のエースは自分よりもまだまだ強いジンベエと同格。
「どうでもいいがお前さんと同じ年だったはずじゃがのう」
「……」
呆れ気味に会話していたはずのハントが無言でその動きを止めた。
「興味出たじゃろう」
「とても出ました」
大切な人を救い、守るために強くなりたいと願うハントは強さに貪欲な人間だ。
ジンベエに鍛えられ、ジンベエよりも強い人間がこの世界にはたくさんいることも聞かされているハントは自分のことを強いと思ったことはない。
他者とのふれあいが少ない彼は他人の強さをほとんど知らないため、強さという定義そのものが曖昧なせいもある。ただ自分が年齢にしては強いということはある程度自覚しており、それゆえに自分よりも強いと推測される人間が自分と同じ年齢にいるという事実に興味を示した。
「本当にその情報が正しいなら……俺が戦ってみたいです」
己の拳を握り締め、意志を伴った声で呟いたのだった。
小さな島に二人の男が対峙していた。
帽子とハーフパンツ、それに裸の上半身が特徴的な男、火拳のエース。
それに向かうはぼろぼろとしか表現しようのない衣服で身を包んだ男、ハント。
エースの後ろには彼を船長と慕う海賊のクルーだろう、彼らがエースに声援を送っている。華やかにすら見えるそれとは対照的なのがハント陣営。後ろにいるのは海侠のジンベエただ一人。
「見ればわかると思うが――」
「――はい、本当にナイフみたいな雰囲気出てますね」
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