暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
Dear days
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
初冬の弱々しい陽光が、深く色づいた街路樹の梢を透かして石畳に薄い影を作っている。

『はじまりの街』の裏通りは行き交う人もごく少なく、無限とも思える街の広さとあいまって寒々しい印象を隠せない。

しっかり武装したアスナと、ユイを抱いたキリト、マイと手を繋いでいるレンは、ユリエールの先導に従って足早に街路を進んでいた。

アスナは、当然のこととしてユイをサーシャに預けてこようとしたのだが、ユイが頑固に一緒に行くと言って聞かなかったので、やむなく連れてきたのだ。

無論、ポケットにはしっかりと転移結晶を用意している。いざとなれば──ユリエールには申し訳ないが──離脱して仕切りなおす手はずになっている。

「あ、そう言えばおねーさん」

レンが、前を歩くユリエールに話し掛けた。

「問題のダンジョンってのは何層にあるの?」

ユリエールの答えは簡素だった。

「ここ、です」

「……?」

レンとアスナは思わず首をかしげる。

「ここ……って?」

「この、始まりの街の……中心部の地下に、大きなダンジョンがあるんです。シンカーは……多分、その一番奥に……」

「マジかよ」

キリトがうめくように言った。

「ベータテストの時にはそんなのなかったぞ。不覚だ……」

「そのダンジョンの入り口は、王宮――軍の本拠地の地下にあるんです。発見されたのは、キバオウが実権を握ってからのことで、彼はそこを自分の派閥で独占しようと計画しました。長い間シンカーにも、もちろん私にも秘密にして……」

「なるほどな、未踏破ダンジョンには一度しか湧出しないレアアイテムも多いからな。そざかし儲かったろう」

「それが、そうでもなかったんです」

ユリエールの口調が、わずかに痛快といった色合いを帯びる。

「基部フロアにあるにしては、そのダンジョンの難易度は恐ろしく高くて……。基本配置のモンスターだけでも、60層相当くらいのレベルがありました。キバオウ自身が率いた先遣隊は、散々追いまわされて、命からがら転移脱出するはめになったそうです。使いまくったクリスタルのせいで大赤字だったとか」

「ははは、なるほどな」

キリトの笑い声に笑顔で応じたユリエールだが、すぐに沈んだ表情を見せた。

「でも、今は、そのことがシンカーの救出を難しくしています。キバオウが使った回廊結晶は、先遣隊がマークしたものなんですが、モンスターから逃げ回ってるうちに相当奥まで入り込んだらしくて……。レベル的には、一対一なら私でもどうにか倒せなくもないモンスターなんですが、連戦はとても無理です。──失礼ですが、お二人は……」

「ああ、まあ、60層くらいなら……」

「なんとかなると思います」

キリトの言葉を引き継ぎ、
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ