第三幕その一
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ラ!」
「御母様」
彼女は母の声を聞いて我に返った。そして冷静さをすぐに取り戻した。
「どうしたのです、こんなところで」
「申し訳ありません」
彼女は恐縮してそう答えた。
「少し事情がありまして」
「事情!?それは何です」
「はい」
アラベラは母に説明しようとした。そこで他の者も入って来た。
ヴェルトナーがいた。そして彼の友人達も。他にも何人かいる。
最後にはマンドリーカが入って来た。彼は廊下の部屋の前を見上げて顔を歪ませた。
「やはり」
彼はここであの時の話を思い出した。
「間違いない、あの男だ。私の予想は当たったようだな」
そしてヴェルトナーに顔を向けた。
「伯爵」
「何だね」
事情がわからず首を傾げている彼に声をかけた。
「申し訳ありませんがこれで帰らせて頂きます」
「何っ!?」
彼はそれを聞いて思わず声をあげた。
「それはどういうことだ」
「あれです」
彼は答えずにアラベラとマッテオを手で指し示した。そして自分の従者に対して言った。
「すぐに荷造りだ。明日の朝の一番の列車で帰るぞ」
「おい、何を言っているんだ」
ヴェルトナーは慌てて彼を引き留めようとする。
「少し待ってくれ。まだ何もわかっていないじゃないか」
「私にはもう全てわかっております」
彼はそれに対してすぐに言葉を返した。
「ですから立ち去らせて頂くのです」
「だから待ってくれというのだ」
ヴェルトナーはそれでも必死に彼を引き留めた。そしてアラベラに顔を向けた。
「アラベラ」
「はい」
彼女は父に顔を向けた。
「御前に事情を聞きたい。いいな」
「はい」
彼女はそれを受けて頷いた。
「まずマッテオ君のことだが」
「はい」
「一体何がどうしたのか説明してくれないか」
「わかりました」
彼女は父に答えた。
「私はつい先程ここに戻ってきたばかりです。そしてマッテオにこの前で御会いしたのです」
「その言葉、偽りはないな?」
「全ては御父様が最もよく御存知の筈です」
「よし」
彼はそれを聞き安心した顔になった。そしてマンドリーカに顔を向けた。
「娘の言葉に偽りはありません。これでおわかりでしょう」
だがマンドリーカの顔は晴れてはいない。それでも彼は言葉を続けた。
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