暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
白と黒
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どこか綻びが見つかるものだが、残念ながらアスナ達は『軍』の内情に関してあまりにも無知すぎた。
キリト、レンと一瞬目を見交わして、アスナは重い口を開いた。
「──わたしたちに出来ることなら、力を貸して差し上げたい──と思います。でも、その為には、こちらで最低限のことを調べてあなたのお話の裏付けをしないと……」
「それは──当然、ですよね……」
ユリエールは僅かに俯いた。
「無理なお願いだってことは、私にもわかってます……。でも……『生命の碑』の、シンカーの名前の上に、いつ線が刻まれるかと思うともうおかしくなりそうで……」
銀髪の鞭使いの、気丈そうなくっきりとした瞳がうるむのを見て、アスナの気持ちは揺らいだ。信じてあげたい、と痛切に思う。
しかし同時に、この世界で過ごした二年間の経験は、感傷で動くことの危うさへ大きく警鐘を鳴らしている。
キリトを見やると、彼もまた迷っているようだった。じっとこちらを見つめる黒い瞳は、ユリエールを助けたいという気持ちと、アスナの身を案じる気持ちの間で揺れる心を映している。
レンはと言えば、相も変わらず煙管を吹かしている。キリトと同様のその漆黒の瞳からは、何の感情も読み取れない。
──その時だった。今まで二人で仲良くはしゃいでいたユイとマイが、ふっとカップから顔を上げ、言った。
「だいじょうぶだよ、ママ。その人、うそついてないよ」
「だいじょーぶなんだよ、レン」
アスナはあっけにとられ、思わずキリトと顔を見合わせた。
発言の内容もさることながら、昨日までの言葉のたどたどしさが嘘のような立派な日本語である。
「ユ……ユイちゃん、そんなこと、わかるの……?」
顔を覗き込むようにして問いかけると、ユイはこくりと頷いた。
「うん。うまく……言えないけど、わかる……」
その隣では、レンがマイに対し、同じような光景を繰り広げている。
「マイちゃん、何でわかるの?」
レンのその当然とも言うべき問いに、マイはにへへっと笑う。
「なんとなく」
その言葉を聞いたレンは右手を伸ばし、無言でマイの頭をくしゃくしゃと撫でた。そしてこちらを見て、にやっと笑う。
同様の笑みを浮かべ、キリトが言う。
「疑って後悔するよりは信じて後悔しようぜ。行こう、きっとうまくいくさ」
「……あいかわらずのんきな人達ねえ」
首を振りながら答えると、アスナはユリエールに向き直って微笑みかけた。
「……微力ですが、お手伝いさせていただきます。大事な人を助けたいって気持ち、わたしにもよくわかりますから……」
ユリエールは、空色の瞳に涙を溜めながら、深々と頭を下げた。
「ありがとう……ありがとうございます……」
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