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くらいくらい電子の森に・・・
第十三章 (2)
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きまでの追い詰められた気分が徐々に薄らぎ、罠を仕掛けて叢で獲物を待つハンターのような、嗜虐的な感情に取って代わった。傍らで不敵に微笑む僕の従姉妹が、すごく頼もしい。流迦ちゃんとなら、何でも出来そうな気がする。
「この先の角でいいだろう」
「充分ね」
僕らは、お互いの目を覗き込みながら微笑みあった。



「……いない!誰もいないぞ畜生!!」
烏崎ともう1人の小柄な男が、流迦ちゃんの部屋になだれ込んでくるまでに、それから5分と経たなかった。部屋の中央に乱入して、ベッドの下やテレビの影を物色している。僕はそっとドアに忍び寄り、電子ロックに携帯をかざした。ランプが一瞬赤色に激しくまたたいて、ふっと沈黙した。…口元に、嗜虐的な笑みが広がるのを感じる。この感情の高まりに呼応するように、キューブが回転する音が高まった。
「終わったよ、流迦さん」
流迦ちゃんは、薄く微笑んで僕を迎えてくれた。
「いい子ね。…さ、やるわよ」
「うん」
「…おい、何だよお前ら」
紺野さんが、うろたえたような声を出した。…そうか。紺野さんには、今何が起こってるのか、さっぱり分かってないんだった。僕たちは目を見交わして、また笑った。
「あいつらは、もうあの部屋から出られないんだよ」
「そう。電子ロックの情報を、書き換えてやったの。あいつらもカードキーを盗むなり奪うなりしたみたいだけど、これでもう、あのカードキーでは出入りできない」
部屋の方から、ドアを何度も蹴りつける音が聞こえてきた。腹の底から可笑しさがこみ上げてきた。
「…そうか。なら、もうここには用はないな。さっさと戻るぞ」
「詰めが甘いよ、紺野さん」
流迦ちゃんから一瞬目を離して、紺野さんの目を覗き込んだ。…不審なものを見るような顔をしている。本気で可笑しくて、大笑いしそうになった。
「今は外の交通事故で混乱してるけど、夕方になったら看護士の巡回がある。この檻は、時限装置付きなんだよ。…今のままじゃね」
「…何する気だ、お前ら!」
ふい、と顔を背けて紺野さんを視界から外した。この人は、まだ分かってないんだ。その『人間的な選択』が、どれだけ自分を追い込んできたのか。僕は流迦ちゃんの指が、ノーパソのキーボードの上を滑るように動くのを、ぼんやり見ていた。
――やがてノーパソの画面に、髪を乱して部屋をうろつきまわる二人の男が映し出された。
「これは?」
「んふふ、部屋の液晶テレビの上に、カメラをつけておいたの。こっちの映像を送ることも出来るわ」
「それは面白いね」
「さ、始めましょう」
部屋にいる二人の姿が、液晶の光に照らし出されて白く変わった。ぎょっとしたように液晶を覗き込んでいる。…笑いが、止まらない。
『…お前、これはどういうことだ!!』
口元を手で隠してくすくす笑いながら、流迦ち
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