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くらいくらい電子の森に・・・
第十三章 (2)
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緊縛画像をあらためながらも、紺野さんが容赦なく言い放った。
「で、お前はどうする気だ。俺達は流迦ちゃんを奪還して雲隠れするぞ」
「私は……ここに、います」
流迦ちゃんが、くく…と小さく笑ってベッドから飛び降りた。
「殺されるよ、あなた…」
「…私が、『あの人』を裏切るわけにはいかないもの」
僕も紺野さんも、黙ってしまった。笑っているのは、流迦ちゃんだけだ。
「……後悔は、しないんだな」
「しません」
そう言って、弱々しく笑った。…たまらなかった。こういう人に、僕が何を言っても無駄なんだろう。
「――あーあ、『荷物』が増えちまう」
「え」
僕の反応より、八幡の反応より早く、紺野さんの右手が八幡の腹を打った。どむ、という鈍い音とともに、八幡が崩れ落ちた。
「…冗談じゃねぇぞ。折角のお宝画像が、遺影になっちまう」
「あんた、鬼畜か」
「流迦ちゃん、縛っとけ。…さっきの縛り方でな♪」
「はーい」
「こっ、こら、駄目だよ!貸して、僕が縛るから!」
「ま、生意気。…私の『縛り』に、張り合う気?」
「マニアックな縛り方を競いたいんじゃないよ!…ほら、戻るよ」
八幡が暴れられない程度に緩く縛ると、肩に抱えあげてみた。…重い。信じらんないくらい重い。脱力した人間は重いとは聞いていたけど、ここまでだったとは。ふらふらしてると、紺野さんが脚の方を持ってくれた。
「…詰めが甘いわね、姶良」
「なっ…なんだよ、これ以上女の人に酷いことを」
「その女のことじゃない」
流迦ちゃんは薄い微笑を浮かべながら、窓を顎でしゃくった。窓から見下ろせる渡り廊下を、血相を変えて駆けてくる烏崎が見えた。
「データは入ってない、携帯には紺野が出ない。…相当、きてるんじゃない」
「…ふーん、そうだね。放置するのは、まずいね。…ねぇ流迦さん。ここの電子ロックの情報を把握してるってことは、ちょっと書き換えも出来るってことだよね」
「同じ事を、考えてたとこよ」
僕の眼を覗き込んで、綺麗な弓形に唇を吊り上げた。僕も笑い返した。…血縁って不思議だ。幼い頃の僕が知ってる『流迦ちゃん』は、本来の流迦ちゃんじゃなかった。なのに、10年ぶりに会う流迦ちゃんと僕は、互いの考えそうな事が手に取るように分かる。流迦ちゃんの思考に感化されるみたいに、僕の思考も加速していく。…僕たちはとても『相性がいい』。
少し、脳がピリピリする感じがする。いつも僕の思考にフィルターを掛けてせき止めていた何かが、麻痺してるような…。でもそれは多分、ただ単に僕の思考を妨げるもの。あっても何の役にも立たないもの。働く必要のない器官だ。
「じゃ、ここから近くて、てっとり早く潜める所を教えてよ」
「イヤ。どうせ見取り図、覚えてるんでしょ」
「…まぁね」
――何だか、気分が高揚してきた。さっ
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