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くらいくらい電子の森に・・・
第十三章 (1)
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ら、八幡さんが流迦さんのもとに残るように、誘導しておいたよ。だから、この2人が回収に行ってる間は、流迦さんの周りは、その八幡さんだけだ」
「お前な……」
紺野さんが、頭を抱えた。
「俺達は隔離病棟に入れないんだぞ!周りを手薄にしたところで、どうにもならないじゃないか!」
「…ところが入れるんだな!」
カードキーの情報が入った携帯をかざすと、僕が言おうとしてたことを一瞬で察知したらしく…やっぱり頭を抱えた。
「あいつは…!まだこんなことしてんのか」
「今回はこれで助かるんだから」
「問題はカードキーだけじゃねぇよ。…隔離病棟の入室チェックが、あるだろうが」
「…そうか。あそこをなんとかしないと…受付のおじさんが、トイレに行くのを待つ?」
「そんな悠長なこと言ってられないぞ。こっちの連絡があまり遅くなると、怪しまれる」
「うーん……」
その時、柚木がすっと立ち上がった。ナース服はまだ着替えていない。
「要は、あいつらがリネン室に入れなければいいんだよね」
「え……?」
「連絡してもいいよ。…私が、時間を稼ぐ」
柚木は、外していたナース帽を再びかぶった。



絶対に間違えないように、リネン室までの見取り図と方位磁石を持った。適当ながらくたを詰めたトランクを2つ載せて、上から毛布で覆い、万一の場合にMOGMOGにナビゲートしてもらえるように、紺野の携帯をポケットに入れる。絶対間違っちゃだめ。そう、何度も自分に言い聞かせた。人の命がかかってるんだから。
「準備が終わったら、流迦さんにメールを入れて、リネン室を離れる。そして彼らがリネン室に近づいてきたら、それとなく警戒して、入りづらい雰囲気を作る…いいね、絶対に無茶はしちゃだめだよ」
「…うん」
自分を送り出す時の、姶良の心配そうな顔を思い出して、少し口元をほころばせる。…大丈夫だよ、子供じゃないんだから。
幸い、誰にも警戒されずにリネン室にたどり着いた。トランク2つを、わざと見つかりにくい場所に隠して、上からシーツをかけた。そして、流迦にメールを送信する。
送信した瞬間、じっとりと手が汗ばんでくるのを感じた。動悸が止まらない。…人を2人も殺した奴等に、『合図』を送った…。そう、想像するだけで、胃が痛くなった。



ご主人さまが、いつも私に微笑みかけてくれた、ディスプレイ。もう、何も映さない。永遠に、何も映さないんだ。
ビアンキ…って、笑いかけてくれたご主人さまは、もうどこにもいない。
だから、飾ろう。ご主人さまが私を見てくれた数だけの瞳を、ディスプレイいっぱいに飾るの。キラキラ光って綺麗。その中で、ご主人さまに見守られながら、私はずっと眠る。ずっと、溶けて消えてしまうまで。

紅い扉は、最終章。

私と、ご主人さまの。…あれ?最終章?
ご主人
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