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アラベラ
第二幕その五
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にそれが入る。そして私はあの人にそれを捧げる。それで私の娘時代は完全に終わる。そして私は」
 彼女は夜空の中にある白く一際大きな星を見た。
「あの星を二人で見ることになるのね」
 そして微笑んだ。目を伏せるとその場を後にした。バルコニーにはただ星とキャンドルの光だけがあった。
 その頃マッテオはズデンカと共にいた。
「姉さんはいたのかい?」
「え、ええ」
 彼女はその問いに戸惑いながらも答えた。
「そうか、それならいいけれど」
 彼はそれを聞いてとりあえずは胸を撫で下ろした。
「そして何と言ってるんだい」
「うん」
 彼女はここで一瞬目を伏せた。だが顔を上げてマッテオに対して言った。
「手紙を預かってきたよ」
「手紙か。まさかそれは」
「そうさ、君の手紙への返事だよ」
 彼はそこで懐から一通の手紙を取り出した。
「これさ」
 そして彼にそれを差し出した。
「気持ちは有り難いけれど」
 だが彼はそれを手にしようとはしなかった。
「どうして?」
 ズデンカはそんな彼に問わずにはいられなかった。
「怖いんだ、受け取るのが」
 彼は沈みきった顔で答えた。
「もし絶縁の手紙だったら」
「そんな筈ないよ」
「いや、やっぱりいいんだ」
 彼は臆病になっていた。
「やっぱり転属を願い出ることにするからそれでいいだろう」
「諦めるには早いよ」
「もう充分だよ。結局彼女は僕には高嶺の花なんだよ」
「マッテオ」
 だがズデンカはその手紙を無理矢理彼に手渡した。
「開けてみて」
「ここでかい?」
「そうさ。そうしたらわかるよ」
 ズデンカはそう言った後で顔を逸らした。そして心の中で呟いた。
(私の気持ちは届かなくてもいいわ)
「わかったよ」
 彼はようやく頷いた。そして意を決して手紙を開けた。そこから鍵が姿を現わした。
「これは」
「何処の鍵か知りたい?」
「うん。何処の鍵だい?」
 彼はズデンカに問うた。
「しかも手紙はないし。これはどういうことなんだい?」
「部屋の鍵だよ」
「部屋の」
 マッテオには何が何だかまるでわからなかった。
「こっちに来て」
 ズデンカはここでマッテオを隅に導いた。
「うん」
 彼はそれを受けてそこにきてた。ズデンカはそれで話をはじめた。
「姉さんの部屋の鍵だよ」
「まさか」
「本当だよ。僕は嘘は言わない」
 ここでマンドリーカが通り掛かった。
「おや、あれは」
 見ればズデンカがいる。彼は目を止めた。
「ここで何を話しているのだ」
 本来なら立ち聞きなぞしない彼だがこの時ばかりは何故か違った。ふと足を止めてしまったのだ。

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