第二幕その五
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
にそれが入る。そして私はあの人にそれを捧げる。それで私の娘時代は完全に終わる。そして私は」
彼女は夜空の中にある白く一際大きな星を見た。
「あの星を二人で見ることになるのね」
そして微笑んだ。目を伏せるとその場を後にした。バルコニーにはただ星とキャンドルの光だけがあった。
その頃マッテオはズデンカと共にいた。
「姉さんはいたのかい?」
「え、ええ」
彼女はその問いに戸惑いながらも答えた。
「そうか、それならいいけれど」
彼はそれを聞いてとりあえずは胸を撫で下ろした。
「そして何と言ってるんだい」
「うん」
彼女はここで一瞬目を伏せた。だが顔を上げてマッテオに対して言った。
「手紙を預かってきたよ」
「手紙か。まさかそれは」
「そうさ、君の手紙への返事だよ」
彼はそこで懐から一通の手紙を取り出した。
「これさ」
そして彼にそれを差し出した。
「気持ちは有り難いけれど」
だが彼はそれを手にしようとはしなかった。
「どうして?」
ズデンカはそんな彼に問わずにはいられなかった。
「怖いんだ、受け取るのが」
彼は沈みきった顔で答えた。
「もし絶縁の手紙だったら」
「そんな筈ないよ」
「いや、やっぱりいいんだ」
彼は臆病になっていた。
「やっぱり転属を願い出ることにするからそれでいいだろう」
「諦めるには早いよ」
「もう充分だよ。結局彼女は僕には高嶺の花なんだよ」
「マッテオ」
だがズデンカはその手紙を無理矢理彼に手渡した。
「開けてみて」
「ここでかい?」
「そうさ。そうしたらわかるよ」
ズデンカはそう言った後で顔を逸らした。そして心の中で呟いた。
(私の気持ちは届かなくてもいいわ)
「わかったよ」
彼はようやく頷いた。そして意を決して手紙を開けた。そこから鍵が姿を現わした。
「これは」
「何処の鍵か知りたい?」
「うん。何処の鍵だい?」
彼はズデンカに問うた。
「しかも手紙はないし。これはどういうことなんだい?」
「部屋の鍵だよ」
「部屋の」
マッテオには何が何だかまるでわからなかった。
「こっちに来て」
ズデンカはここでマッテオを隅に導いた。
「うん」
彼はそれを受けてそこにきてた。ズデンカはそれで話をはじめた。
「姉さんの部屋の鍵だよ」
「まさか」
「本当だよ。僕は嘘は言わない」
ここでマンドリーカが通り掛かった。
「おや、あれは」
見ればズデンカがいる。彼は目を止めた。
「ここで何を話しているのだ」
本来なら立ち聞きなぞしない彼だがこの時ばかりは何故か違った。ふと足を止めてしまったのだ。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ