弐ノ巻
ひろいもの
2
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が高彬のかなんてわからないけれど、妹の由良が言うからにはそうなんだろう。
ちょ、ちょっと待って。落ちつけ。落ちつくのよ前田瑠螺蔚。
よく考えて。昨日、何があった?
霞がかった記憶の向こう、昨日、そうだ。あたしは手招かれるように琵琶の湖に行ったんだ。そのまま、水の中に入って行った。
今から思えば、なんであんなことしたのかさっぱりわからない。死にたいなんて、そんなこと思ってもなかったのに。
ただ、死んでもいいと心のどこかにあったのは事実なんだろう。義母上と兄上が亡くなられて、ぽっかり空いた心の虚に、あたしは危うく飲み込まれるところだった。
確、か、誰か…いや高彬だ。高彬と、なにか言い争ったような気がする。ああそうだ。高彬が、あたしが兄上に恋愛感情を持ってるとかバカなこと言いだして。
それから、それから…。
…。
わ、わからない!ボケたのかな。昨日のことなのに!
水に入って、高彬がいて、ってことは多分高彬が助けてくれたんだろう。で、言い争って、その、後よそのあと!肝心カナメなとこが何一つ思い出せない。
いや、でも、ねぇ。あたしが、高彬の着物着てるって、朝高彬とひとつ布団にいるって、…ねぇ。いや、まさか、そんな。
…。
だ、だめだ煮詰まる!悪い方にばっかり考えちゃうわ。とりあえず高彬は置いておいて、散歩にでも行こう。せっかく早起きしたんだしね!
「由良。あたしちょっと散歩にでも行って考えまとめてくるわ。あんたの言う通り、高彬に会いに行くのは時間置いてからにする」
「瑠螺蔚さま。わたくしもご一緒しますわ。柴田のこともございましたし、逆恨みする輩がいないとも限りません。おひとりで出歩くのは危険です。わたくしも心配ですし、兄上様にも怒られてしまいます」
由良が一緒にいても、危険度は変わらないと思うけれど…いいか。
「わかった。一緒にいこっか」
それに、前田家にも行きたい。
向き合わなきゃならないんだと思う。あたしは。
何を失ったかを。
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